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December 08, 2003
ばい菌回路

IEEE(アイ・トリプル・イー。世界に38万人の会員のいる電子・電気工学協会)の会報、Spectrum11月号のGerms that Build Circuit (IEEE会員オンリー・・・だと思います。申し訳ありません。)

「ばい菌で半導体回路を作る」という研究についての記事。半導体は、ムーアの法則にしたがってどんどん小さくて高性能になっているけれど、そのうちに、いくらなんでも今の製造方法ではミニチュア化の限界がくるということで、次はナノテクやバイオを応用しようという動きが進んである。
「DNAをいじって、自動的に回路が生えて来るようにしよう」
とか。植物園じゃないんだから、、、という感じだが、真剣です。

この手の話を聞くと、いつも不思議に思ったのが
「原料の生物が死んじゃった後の回路はどうなるんだろうか」
ということ。しかしこの記事を読んで納得。生きてるまま回路として使うわけじゃないんですね。。。あたりまえか。

とがったロケットのような形のウィルスを基盤にくっつけて、その後半導体結晶でコーティング、一気に熱して中身のウィルスが死んだ後は、外側のコーティングだけ残って、極細の回路ができる、というしかけ。

原理はこんな感じである。

Here's how it works: first, a solution of bacteriophage is poured onto a piece of crystalline semiconductor. Then the chip is rinsed. Most of the viruses are washed away, but a few stick. This sticky subset is removed from the chip, allowed to multiply (by infecting bacteria with them), poured back onto the chip, and then subjected to a more stringent (that is, more acidic or more basic) wash. After several cycles in which the wash becomes stronger and stronger, the viruses sticking to the wafer are those whose peptide coats have a tight fit to the semiconductor crystal.

Belcher and her students have since shown that engineered viruses not only stick to semiconductors but can also be made to form nanometer-scale semiconductor crystals themselves. When mixed with precursor chemicals containing a semiconductor's elemental ingredients, the virus's engineered peptides act as a template, hustling atoms into the same crystal structure to which the peptides were engineered to bind. The result is an organic/inorganic hybrid: viral particles, 7 nm wide and 850 nm long, sporting 2- to 3-nm semiconductor crystals wherever the engineered peptide is found.

1)GaAs(ガリ砒素)やInP(インジウム燐)など、半導体に使われる特定の素材にくっつきやすいウィルスを遺伝子操作で作る。

方法は意外に原始的で、ウィルスをくっつけたい素材の上に載せて、ざっと洗い流す。素材の上に残ったウィルスを集めて、増殖させる。で、また同じ素材の上に載せて、洗い流す。これを何度か繰り返すと、その素材に強力にくっつくウィルスに「進化」する。

(この進化過程の音楽付きアニメーションがここで見られます。下は出だしの画面をキャプチャしたもの。このアニメーション、いきなりファンキーな音楽で始まりますのでご注意。)

2)ウィルスはまた、自ら半導体素材を作り出すように「進化」することも。周囲に原料となる元素を撒くと、それを集めてきて、ちゃんとGaAsやらInPやらの鎧を作り上げる。

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攻殻機動隊もびっくり、であります。ウィルスが半導体に進化できるのだったら、人間だって、地球にガリウムとか砒素とかがあふれていたら、みんなガリウム砒素で覆われた体に進化してたかもしれないわけで。環境の成分次第では、誰でもそのままマジンガーZだったり。

また、「回路用の生物がどんどん進化して、人類の敵になったら」という、SF的心配もないではないが、この際それはそれで見ものである。ガリウムアーセナイド対インジウムフォスファイドの戦い、という具合に、敵同士をぶつけることもできるかもしれないし、、というのはゴジラ対モスラの発想か。

ちなみに、この研究をしているAngela Belcherは大学では分子生物学を専攻、Ph.D.は物性化学、ポスドクは電気工学という「歩く三位一体」みたいな人である。IEEE Spectrumの同じ号には、BioEE:The Next Job Frontierと題して、「Belcherのように、バイオもわかる電気電子工学エンジニアが今後は求められる」という記事も載っていた。彼女のような人材は、少なくともしばらくの間、インドや中国にアウトソースされることはないであろう。

まだ学生の皆さん、がんばってください。

Posted by chika at December 08, 2003 10:24 PM | TrackBack
Comments

丁度昨日読んでいました。IEEE Spectrumはいつもはぱらぱらっと目を通してすぐ捨てちゃうんですが、"Germs~" は面白く、久々に読みふけってしまいました。
しかし、自然淘汰を利用しているってところで、予想しない方向にファージが進化してゆく可能性がやっぱり気になりますね…

Posted by: shiro on December 9, 2003 02:02 AM

Spectrum読んでる人がいるとはちょっと嬉しいです。phage進化の行く末はやっぱり、お父さんがじゅうたん状生物になってしまう椎名誠の「アドバード」でしょうか。。。。。

Posted by: chika on December 9, 2003 11:20 PM

えーっと、お父さんは地走りではなくて、岬の○○になってて、地走りに指令を出したんじゃありませんでしたっけ。

椎名誠のSFは大好きです。こっちのSF好きの友人に紹介したいのだけれど、あの言語感覚を英訳するのは大変そうです。

Posted by: shiro on December 9, 2003 11:56 PM

Virus進化過程のアニメ、凄い...
ふと小鳥さんのBlogを読んでいるような気になりました。
例えば、この日など、http://coolsummer.typepad.com/kotori/2003/11/post_25.html

椎名誠 再登場ですね。 中国の鳥人を最近ようやく読みましたが、映画の方がのんびりしていて良かったように思います。

Posted by: iwa on December 10, 2003 05:44 PM

shiroさん

あれー、そうでしたっけ。。。そうか、確か脳を取り出されて何かの回路の一部にされたんですよね。司令塔だったんですか・・・。地走りの名前も忘れちゃってるし、全然だめですね。

iwaさん

iwaさんのコメントを受けて、一枚画面キャプチャを本文に足してみました。

音楽がすごいですよね。これだけのこと説明するのに、こんなに手のこんだアニメが必要なのかよくわかりませんが。それとも、単に音楽のインパクトがすごいので、手がこんでるように見えるだけでしょうか???

Posted by: chika on December 10, 2003 07:06 PM

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business grants

Posted by: business grants on March 24, 2004 12:16 PM
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