新しいサイトに引っ越しました。全過去エントリーも丸ごと移しました。
http://www.chikawatanabe.com
へどうぞ。

November 27, 2002
出張

昨日は南カリフォルニアに日帰り出張をしてきた。朝6時に家を出て、7時半の飛行機でロサンジェルスの近くのオレンジ・カウンティーに行って二つ会議をこなして、9時に帰宅。

アメリカ人はこういう出張をやたらにする。空港は大変混んでいる。朝も5時半を過ぎるともう空港内は行列の嵐。こうして、全米あちこちに飛び回ってビジネスをする、というのがアメリカ型のビジネスマンである。その上、激しい職住「遠」接で、「自宅はシアトルで仕事場はサンノゼ、毎週末飛行機で自宅に帰る」なんていう人もかなりいる。

国内といっても、本土だけで時差が3時間、ハワイと東海岸では5時間だ。その上、莫大な運行経路が錯綜するので、空港はどこも混雑。我が家に最も近いMineta San Jose Airportは「ひざの上に他の時間待ちの客が座り込むほど混んでいる」と称されるくらい始末に終えない。

国内出張のたびに、「いやぁ、本当にたくさんの人がばんばん空をとんでいる国なんだなぁ」と圧倒される。

まぁ、日本に出張したアメリカのビジネスマンが、東京都内の電車が四六時中混んでいるのを見て、「何でこんなにたくさんの人があちこちに移動しているんだ」と驚くが、それと同じことか。

ただ、東京の電車と異なるのは、アメリカの飛行機はセキュリティーが厳しくなったことだ。空港のセキュリティーチェックを受けるところでは、靴を脱ぎ(ファスナー付きショートブーツを履いていたが、このファスナーの金属が引っかかる可能性があるので)、ベルトをはずし(バックルが危ない)、時計・アクセサリを全てかばんに入れて、靴下ですたすたと通り抜けた。やたらと警報のなるレベルが下がっていて、ポケットに何枚か小銭を入れているだけで「ピーッ」。鳴ってしまったら、かばんの底までひっくり返して、全身触診の刑である。

アメリカのビジネスマン向けに、「出張キット」と称して金属の代わりにプラスチックを使った時計、ベルト、靴のセットを売り出したら結構売れると思う。本当に。

Posted by chika at 11:12 PM
November 25, 2002
アメリカの医療

アメリカの保険制度はめちゃめちゃだ。しかし高度医療は目を見張るものがある。対する日本は、整然とした保険制度と、目を覆うような医療が横行する。(もちろん全部のお医者さんがひどいわけではないが)どちらがいいかは個人の好みによるだろう。

保険はとにかく複雑。会社勤めの人は会社が保険を準備してくれるのはよいのだが、システムによって医者を自分で選べたり選べなかったりする。また、転職者が多いにも関わらず、pre-existing condition(前からかかっている持病)があると、転職した後、転職先の保険に入れないのこともあるので、長期的な病気を持っている人は現在の会社をやめられない、ということもある。しかも高い。保険料も結構高いのだが、医療費そのものも高い。三日入院して、保険で8000ドルカバーされたけど、それでも自己負担1000ドル、というのが我が家の最も最近の医療支出である。

一方高度医療のほうは、まぁいろいろエピソードはあるのだが、今日とある日本人の人と話していたら、子供が2歳半の検診で軽度の自閉症と診断された、とのこと。その人は市民権はおろか、グリーンカードすらない単なるビザ滞在者なのだが、「自閉症には、早期治療開始が肝心」と、公的負担ですばやく自閉症児用の様々なプログラムを受けることができるようになったとのこと。「アメリカの懐の深さを感じた」と。

かなり軽度で「言葉の習得がやや遅い」などの症状なので、日本だったらおそらく「とりあえずもうしばらく様子を見てから考えましょう」といわれる可能性が非常に高いらしい。ところが、自閉症はなるべく早く、できれば3歳前に治療を始めるのが鍵なのだ。だから、2歳半で「しばらく様子を見る」ことは一生取り返しの付かない貴重な時間を無駄にしてしまうことになる。

この話だけでなく、アメリカという国に住んでいてよく思うのは「日常的なことはことごとくすんなり行かないけれど、有事の際には底力を発揮する国だ」ということ。電話のとりつけ、家の修理、ちょっとした家具の注文、そういった「普通のこと」は全く持って正しく遂行されない。頼んだタクシーは来ない、特別注文した家具はなくなる。でも、9月11日という国家にとっての「有事」、2歳児の自閉症という家庭にとっての「有事」には、非常に力強い。

日常的なことがすんなり進んで、有事の際には力強いというのがいいに決まっているが、まぁどっちか選ばないとならないんだろう。私個人の好みとしては、有事に強い方に税金を払いたい、と思うのであったが、まぁ、これは本当に個人の好みの問題である。

Posted by chika at 10:37 PM
November 24, 2002
Onion

Amazonで、ついくらくらとThe Onion, Ad Nauseamという本を買ってしまった。ジョークばっかりの新聞The Onionの集大成である。日本で近いものといえば「と学会」の「とんでも本」かな。正式なタイトルは忘れたけれど、おかしな新聞記事、近所で見つけた変な看板、狂ってる本、などいろいろ載っていてコンビニなどで買える本だ。例えば、「おかしな熊度」という大見出しをまじめに出しているローカル紙とか、、、。これ、ワープロではトライしても間違うことが難しい間違いだ。「たいど」ではなく「くまど」と入力しないと出てこないものね。

もとい、Onionは、本物だけどおかしいものを集めた「と」と違って、一生懸命作ったsatire(風刺)記事である。同様にsatireを毎週掲載していた、Satire Wireというウェブサイトがあって、かなり楽しみにしていたのだが作者ネタ切れにより終了してしまった。そこで、似たようなものとして評判のOnionの本を買ったのだった。

あああ、しかし。Onionの面白くないことといったら・・・・。「Clinton's last act: Had Minnesota Renamed Clintonsota」とか。それがどうした!?

つまらない風刺新聞全264ページが読みたい方は今すぐAmazon.comへ!ひたすら笑えないジョークを読み続けるのも、なんだか瞑想的効果があるかも。

Posted by chika at 09:49 PM
November 21, 2002
ねずみ講

ねずみ講のお誘い手紙がやってきた。Eメールじゃなくって、本物のsnail mailで、である。その手紙に名前が載っている6人の人に1ドルずつ郵送する。さらに、6人のうち1番上の人の名前を消して、その代わり一番下に自分の名前を付け加えて、その手紙を200人の人に出す。すると200人のうち15人が同じことをするとして、3ヶ月で80万ドル、約1億円儲かる、というものだ。

200人分のあて先は、"Opportunity Seekers"という会社に32ドルの小切手を送るとメーリングラベルに印刷したものが郵送されることになっている。ご丁寧にコスト詳細が載っていて、それによればコピー代、切手代などあわせて計137ドルだそうだ。その中で最も高いのが切手代で74ドル。次が200人のあて先リスト。うーむ、これはOpportunity Seekersの陰謀か、はたまた郵便局の陰謀か。

それにしても、200人分のあて先が簡単に買えちゃうところがアメリカっぽい。(最近は日本のもこういう仕組みになっているのかもしれないけど・・・)アメリカはダイレクトメール天国だ。今はどうか知らないけど、公的機関である運転免許運営母体のDMVですら、免許証の情報を転売していた。住所、生年月日、目の色、髪の色、体重、身長、という内容のため、洋服のカタログ販売なんかにも使えるのだ。(太っている人専用の洋服、とか・・・)。

しかし、このねずみ講のレターが来たということは、私の住所・名前はこのOpportunity Seekersに握られてしまっているということだ。これから続々と同じ郵便が来続けるのだろうか。。。。aaaahhhhrrrgggg

Posted by chika at 10:21 PM
November 19, 2002
Prof. Nishi

スタンフォード大学のNanotech Fabrication Center長になられた西さんにお会いした。西さんには、我々が運営しているNPOのJTPAのアドバイザーにもなっていただいている。

西さんは、東芝でCMOS半導体の研究開発をした後、HPの研究所長に転進、それからTexas Instrumentsの研究開発のトップとなり、今年の春からスタンフォードに来られた。TIでは、同社創立以来最初のChief Scientistにもなった。誰に対しても大変丁寧な素晴らしい方で、ほとんど後光がさしている。

「日本は80年代半ばまで発展途上国だった。発展途上国の成功の仕組みと、先進国の成功の仕組みは違う」という西さんの言葉があった。80年代半ばでは、日本と米国では転職すると給料が倍になった、と。「発展途上国の成功の仕組み」は「安い人件費で、優れた品質の大量生産をする」ことだ。「安い人件費」という最初の条件は先進国になったらなくなってしまう。「優れた品質の大量生産」だけでは勝てないのだ。

西さんいわく「欧米と日本しか世の中になければ、良かったかもしれないが、日本にとっては残念なことに、他のアジアの国がかつての日本の成功のパスをぐんぐん追い上げてきた。しかも中国は当面人件費は上がらない。日本は80年代後半から『先進国の成功の仕組み』を身に着けなければならなかったが、それをしないまま現在になってしまった」と。

西さんは「これから日本も良いほうにいける可能性があるでしょう」とおっしゃっていた。でも、私は個人的には、「先進国の成功の仕組み」を身につける以外にも日本が復活する道はある、と思っている。それは、「人件費の安い発展途上国に戻る」ことだ。

「発展途上国への逆行」はアルゼンチンが20世紀のはじめの絶頂期から、長い長い時間をかけてたどってきた道でもある。20世紀のはじめ「ヨーロッパの次の覇権を握るのは米国だろうか、アルゼンチンだろうか」という議論までされるほど、アルゼンチンは豊かな国だった。しかしその後ずっと緩やかな衰退をし、ついに今クライシスに陥いっている。

クライシスは困るけど、国は、実は「発展途上国に戻る」という道もあるのだ。というか「戻っちゃう」ということも十分あるのだ。

Posted by chika at 11:55 PM
November 18, 2002
CIAのベンチャーキャピタル

何事も思い立ったら行動に起こす国アメリカでは、CIAすら例外ではない。なんと、シリコンバレーのVC集積地、Sand Hill Roadにベンチャーキャピタルを持っている。その名もJames Bond映画からとったIn-Q-Telというお茶目なもの。ヘッドのLouieは"Mister Q"と呼ばれているとかいないとか。

サンノゼマーキュリーニュースの記事にあるように、年間予算$35Mと小ぶりなものだが、まぁ普通のファンドが3年かけて投資するとすれば、$100Mのファンドに匹敵する。投資対象はCIAの活動に役に立つもの、ということで、例えばknowledge managementのTacitとか、Stratifyとか。

不況のときは国家予算で乗り切る、というのはベンチャーの世界にも通用する法則。Oracleがその良い例で、不況の80年代に公共事業向けの受注で成長した。そのせいで、逆にVCからの出資を仰がずにすんだので、上場後CEOのLarry Elisonは超お金持ちになったのである。(「VCから出資してもらえなかったから、公共事業で食いつないだ」ともいえるが、まぁ塞翁が馬ということだ)

ちなみに、CIAのサイトはとっても役に立つ。世界各国の基礎情報が掲載されているページでは、それぞれの国が自国で行う国勢調査よりも早く人口やデモグラフィックの推定情報がでる。昔は「CIA FAQ」と称して「CIAは人を暗殺するんですか?」「いえ、そんなにしません」などという率直なことが淡々と書いてあって面白かったのだが、さすがになくなってしまった。残念。

なお、最近はCIAのみならず、米国の軍隊もベンチャーキャピタル的な予算を年間$25Mほど獲得。例えば、Soldier Nanotechnology(兵士用ナノテク)ということで、ハイテクな軍服素材開発などをしている。ベンチャー企業投資だけでなく、MITとのコラボレーションにも手を出している。

ダイナミックである。

Posted by chika at 09:39 PM
November 17, 2002
庭仕事

[Oleanderの花]

先週嵐が来て、庭の木が何本か折れたりしたので、今週末はせっせと庭掃除。土曜も日曜も朝から晩までせっせと力仕事をした。あまりに木がこんもりと茂っていて敷地全体が暗いので、あちこちの木の枝をばさばさと切る。

トラック一台分くらい切ったが、全て終えて全体を眺めるとなんだかあんまり変わったような気がしない。チェーンソーを含め、4種類の電動のこぎりを駆使したのに・・・。うーん。やっぱり大物の処理はプロを呼ばないと駄目だな、と納得した二日間。

ちなみに、うちの庭にわさわさと茂っているOleanderという木があるのだが、これが猛毒。葉っぱ一枚食べたら死ぬらしい。牛や馬でも葉っぱ10-20枚で致死量とのこと。詳しくはUC Davisの発表を参照のこと。ちなみに、UC Davisによれば「Oleadner is one of the most toxic plants to human」ですと。
花も枝も根っこも全て毒で、枯れてもまだ毒。燃やしたら煙も毒。全く知らずに最初の頃は庭で拾った枝をがんがん暖炉で燃やしていた。盛大に煙が出てたな。ちなみに、Oleanderの枝を串にしてBBQをして食べた人が死んだという事件があったらしい。Oleanderは日光さえあれば、水も肥料もほとんどいらず、排気ガスにまみれても大丈夫、という超強力なアフリカ原産の植物である。きれいなつやつやした緑の葉っぱに、白やピンクの花がたくさん咲いてとてもきれい。だけど猛毒。

2日間の庭仕事で、このOleanderの枝やら葉っぱをこれでもかと切り落として庭の隅っこに積みあげた。4メーター四方、高さ1-2メーターくらいは優にある。人間の致死量にして軽く1000人分以上はあるかと思うと、ちょっと変な気がするのであった。。。

ちなみに、compostすると毒性はなくなるようだ。要は「腐葉土」にするんですね。このUC Davisの実験レポートは結構おかしい。Oleanderをcompostして、それでトマトを栽培して、毒性がないことを確認して、最後はみんなで食べました、というもの。まじめに書いてあるだけになんだか最後のところでクスっと笑ってしまう。

Posted by chika at 08:05 PM
November 14, 2002
宮崎駿映画

このあたりに住んでいる同年代の日本人3人と、日本から来ている20代半ばの人2人で宮崎駿映画の話になった。こちらの同年代の宮崎駿作品に対する感想は「かなり嫌い」から「ニュートラル」。「かなり嫌い」の一人は、「宮崎駿の最近の映画って、説教くさいからやなんだよね。でも、それを日本で言うと、まるで非国民扱いされる。そういう『宮崎駿が好きでなければならない』という強制的な感じも嫌」と。

ちなみに、アメリカ人の友人の女性が千と千尋の神隠し(こちらでのタイトルはSpirited Away)を見に行った感想。「Chika、あれは日本人にしか良さがわからない映画なんじゃないの?私は駄目。主人公の女の子が全くもってcluelessでいらいらしちゃった。あんなになーんにもわかってなくって、それでもまわりのみんなが助けてくれてなんとかなるなんて、そんな都合のいいことないよね。」と。

やれやれ。思い起こすに私が子供の頃読んだ漫画やアニメは、どれもこれも「クルーレスな女の子が、純真にほのぼのと生きていると、誰かがやってきて助けてくれる」というのだったような気がする。だから、そういうストーリーじゃない萩尾モトなんかがものすごい新鮮に思えて、むさぼるように読んだのを覚えている。もちろん、「純真でまっすぐに生きていれば助けてくれる」という生き方を選ぶ人がいるのは全く問題ないのだけれど、それしかない、ってのもね。世の中「純真人口」を支える「手助け人口」にも限りがあるはず。

ところが、そういうことを言うと、怒っちゃう人がいる。「人間は基本的にはみんないい人なのだから、正しくまっすぐな生き方をしてさえいれば、傷つけあうことなどない。純真でモノを知らないのは美しいことなのだ。」という超性善説の人だ。私は性悪説ではないのだけれど、「人はみんな違う信念や好みを持っている。だから、一人の人間が良かれと思ってしたことでも、誰かを傷つけたり、他の人にとっては好ましくない結果を生み出すことも大いにある。」と思っている。だから、「他人(や自分の周りの状況)を理解しない」で「信念のままに生きる」というのは、自分が傷つく危険があるだけではなく誰かを傷つけてしまうかもしれない、とっても怖いことなのだ。それに、たとえ相手を完全に理解したからといって、相手の信念を自分の信念として受け入れられるわけではない。異なる志向を持ったまま、相手の志向を尊重して、共存する道を探ることはできるけれど。

宮崎駿がいけない、と言っているわけではない。Miles Davisがジャズをアートに押し上げたように、アニメを新しい次元に昇華した素晴らしいアーティストとして尊敬している。自慢じゃないが、子供の頃、フランダースの犬の最終回で、大泣きしたのを今でも覚えている。(母などバスタオルを持って号泣していた)

それでも、宮崎駿が好きな人もいれば、嫌いな人もいる、っていうのが普通なんじゃないだろうか。本当に私の友人が言うほど日本では宮崎駿が神格化されているとしたらちょっと怖い。

Posted by chika at 10:28 PM