新しいサイトに引っ越しました。全過去エントリーも丸ごと移しました。
http://www.chikawatanabe.com
へどうぞ。

January 31, 2003
INS shredds documents!!!

今日、Palo Alto Dailyというローカル新聞を読んでいたら、「INS(移民局)が申請書類の山をシュレッダーにかけていたことが発覚」という記事を発見。Palo Alto Dailyの記事はオンラインになっていないので、New York Timesの記事を引用すると・・・・・

The shredded documents -- as many as 90,000 -- included applications for asylum, citizenship, visas and work permits, and supporting documents such as U.S. and foreign passports and birth and marriage certificates, according to the indictment.

この記事を「ひどいねぇ」と思いながら読んでいて、突然目が釘付けに。シュレッドしていたのがLaguna NiguelのINSオフィスとあるではないか!!奇しくも私は今、去年Laguna Niguelオフィスに申請したgreen cardの延長申請の結果待ちで、これが来るまで国外に出られないのである。

さらに目を皿のようにして読むと、書類がshredされたのは、2月から4月とある。「2月にバックログを処理するため、パスポートから何から送られてきた書類を全てshred、3月末にはバックログは一掃、しかしその後も1ヶ月ほど毎日来た書類をshred」と。ここで、ほっと一息。私が申請したのは8月。皮肉なことに、この滅茶苦茶な対応のおかげで、私の申請は早く処理されることになったのである。

アメリカという国は、ものづくりが不得意なだけじゃなくて、書類処理もとても苦手なので、こういうニュースに憤りは感じるが、驚きはしない。なんとうか、「想定しうる範囲内の出来事」という感じだ。

なお、Palo Alto Dailyによれば、
「There was no INS policy that required this」
とある。

こんなことをあえて説明しなければならないくらいINSは疑われているのであるが、それでも「本当か」と疑ってしまう。「INSに申請した書類をなくされて、何年もかかる処理をもう一回最初からやり直さなければならなくなった」という話は、私の直接の知り合いからだけでも複数聞いたことがある。しかも、今回のshred事件でも、バックログがなくなった後も1月もshredが続いている。バックログをなくすだけが目標だったらこんなことしなくて良いはず。

ということで、実はアメリカ国内のINSの手続きは全て「宝くじ」方式だったのではないか、という疑いを持ってしまった。定期的に「うぁーもうやってられない、shredしてしまえ」ということが痙攣的に行われていて、運良くshredされない期間に申し込んだ人だけが審査に進んでいるとか。

まぁ、とはいえ、そもそも外国人にこれだけ大盤振る舞いでビザや市民権を出すという素晴らしいポリシーがあるがゆえに、現場は書類で首が回らなくなっているということもあるわけで、仕方ないか・・・。

Posted by chika at 10:31 PM
Angel Chief Officers

最近、自己資金で何年も事業育成をするベンチャーに出会うことが多くなってきた。VCからの資金調達が難しかったという事情もあるが、シリコンバレーに「ハイテクがわかる金持ちアントレプレナー」が増えたという要因も見逃せない。

web servicesのCollaxaもその一つ。NetDynamicsのFounderがCTOをしており、2年近くを外部資金調達をせずに開発に費やし、去年$1Mを切る金額を初めてVCから調達。(ちなみに、Collaxaのcorpoate blogは、XMLやweb serviceの最新情報リンクがあって、blogの新たな使い方の一つとして面白い。)

まだ会社すらないが、シリアルアントレプレナーがCEOをしているMedical Deviceの事業にも出会った。会社組織にはなっていないが、既にプロトタイプがあって、病院での実際の患者によるトライアルの結果も出ている。

今私がコンサルティングで一緒に仕事をしているDanielも、以前起業した半導体ソフト関係の会社を「全額キャッシュ」で売却、ぶらぶらするのも飽きたということで、半導体のエリア・スペシャリストとして手を貸してくれていたのだが、今はまた新たな会社を起業中。既に自腹でオフィスも借り、台湾に出張してビジネス・パートナーとネゴをしている。

それ以外でも、プライベート企業の投資家データベースをリサーチしていて、「high growth業界(ソフトウェアとか)でありながら、VC投資家なし」という例にあたることが増えてきた。事業のほうは随分育っていて、既にかなり顧客がいたりするにも関わらず、である。

シリコンバレーのVC投資はやや上向きになってきたが、VC投資が思い切り冷え込んでいた2001-2002年の間も、「過去にメジャーなexitをして、個人資産が数Milから数百Mil」という人たちが、自らもマネジメントに加わって起業し、実は水面下でいろいろなアイデアが着々と事業化されている。彼らはangelでもあるし、CXOでもあるから"Angel Chief Officers"とでも呼ぶべきか。

マクロに見たら最悪の2002年だったが、VCが経済のフリーフォールのショックで硬直していた間にも、こうしてミクロには新しいビジネスの種が育っているのである。

Posted by chika at 12:19 AM
January 29, 2003
Rambus gets away with murder...

DRAMに関するInfinionとの特許係争で、Rambusが驚きの勝訴、裁判はlower courtに差し戻しになった。詳細はEE Timesの記事へ。

Rambusは自分たちが特許を申請した技術を、標準化団体のJEDECでそ知らぬ顔で標準として推薦、まんまと標準になったところで、後からその標準に従った他の企業にライセンス支払いを求めた。JEDECがきちんとしたルールを持っていなかったという難点こそあれ、これが許されてしまったら「何でもあり(can get away with murder)」ではないか。とはいうものの、まだ差し戻しになっただけで最終判決ではないし、Infinionのほかにアメリカの公正取引委員会、FTCの訴えによる裁判も別にあるのだが・・・。

それにしても、Rambusも勝訴には驚いたのではないだろうか?少なくとも市場が驚いたのは明らかで、判決が出てからマーケットがクローズするまでの間に、株価は57%アップした。

Posted by chika at 11:19 PM
Silicon Valleyは復活するか-追加

昨日のシリコンバレー景気に関するエントリのポイントは「シリコンバレー経済のフリーフォールが止まって、まずは一安心」というニュアンスを伝えたかったのだが、読んだ人は「シリコンバレーの状態は凄く悪い」と受け取ったようですね。

2001年から2002年にかけての当地では、日本のバブルがはじけてからの10年分の落下が濃縮して起こった。それまでのバブルの浮かれぶりからの"Turn of the Fortune"は本当にとてつもない勢いだった。「バンジージャンプで底なしの谷に飛び降りる。どんどん落ちるが、ふと『本当に足にロープがあるのかな』と不安に思う」といった感じ。それがどうも最近、伸びきったロープの感触が足に伝わってきている、なんと素晴らしい!というところか。

Posted by chika at 10:57 PM
戦争になるか?

昨日の夜はBushのState of the Unionスピーチがあった。Bushにとっては再選がかかっており、国民にとっては、イラクとの戦争になるのかどうかを見極めるための、重要なスピーチだった。メジャーなテレビは全てスピーチの中継になった。24時間の間に、いろいろな新聞に分析・コメンタリーが出たが、簡潔に要点がまとまっているものとしては、Reutersの発表へ。

イラクについては「絶対的イエスではないが、様子を見つつ積極的に武力で攻める」というところか。。。。戦争の足音がひたひたと聞こえるアメリカである。

Posted by chika at 10:48 PM
January 28, 2003
シリコンバレーは復活するか

シリコンバレーは絶不調である。

昼日中、壮年の男性が10人くらいのグループでbiking(真剣に自転車に乗ること、ですね。トライアスロンの自転車みたいな感じです)している情景も見うけられる。うちのダンナの元の会社の社長は、18ヶ月くらい前に会社をたたんでから職がないので、ヨットにいそしみ赤銅色にやけている。去年は、引越し用のレンタル・トラックがBay Areaから払底した、という噂がまことしやかに流れたりもした。出て行く人ばかりで流入する人がいないから、である。

2年前の今頃はみな、「後3ヶ月くらいで上向くかなぁ」などと言っていて、プロフェッショナルライフの最初の10年を日本の景気のdownhillの中で過ごした私は、その無防備な楽観にあきれていたのだが、さすがに昨年後半は「果たしてシリコンバレーが復活する日は来るんだろうか」に論調が傾き始めていた。

とにかく1990年代終わりのテクノロジーバブルはすさまじいものがあった。まずこのバブルの余剰分が一掃されないと成長はない。余剰分には、「金」と「人」の二つがある。シリコンバレー復活の指標として、それぞれでどれくらい調整が進んでいるのかを見ることは意味がある。

というわけで、シリコンバレーの社内報 San Jose Mercury Newsのここ数日の記事からいくつかのニュースを拾い出してみる。

■Bay Areaの人口増はほぼストップ
Fewer jobs shrink Bay Area growth

The Bay Area, whose growth rate slightly exceeded the state's in the 1990s, grew only about 0.6 percent in the 12 months ending July 1, 2002, adding 39,500 people.

In contrast, the state grew 1.74 percent -- almost three times as fast.

■Bay Area消費者のムードには薄明かりが
Survey finds Valley mood brighter
「来年には経済は良くなる」と答えた人は、去年の3月に64%だったのが、9月にはどーんと落ちて42%、今月はじめはほぼ横ばいの43%。「悪くなる」と答えた人は去年9月は18%だったのが、14%に。
``My conclusion is that we are actually at a standstill,'' said Miriam Donoho, professor of statistics and marketing at San Jose State University and survey director. ``It's a wait-and-see for what the next three months will be like.''

■ベンチャー投資額は全国ではフラットだがBay Areaでは増加
VC investment falls nationwide, rises in Silicon Valley
Venture capital firms injected $4.2 billion into start-ups in the last three months of 2002, down about 7 percent from the third quarter's $4.5 billion.
Investments in Bay Area companies increased, however, to $1.5 billion from $1.3 billion, a 15 percent jump.
(この記事の元データはPricewaterhouseCoopers, Venture Economics and the National Venture Capital AssociationのMoneyTree Survey)
これはいいニュースか悪いニュースかなんともいえない。投資は98年レベルに戻っているのだが、それでもまだ多すぎる可能性がある。

一方で、ちょっと違う角度のニュースとしては、こんなものもあった
■鉄鋼業界の人々が鉄鋼専門VCを設立Workers form venture fund to save their steel companies
Now, tired of trying to convince banks and investors that the manufacturing industry is worth saving, and frustrated at seeing money -- sometimes their own -- going overseas or to other businesses, steelworkers have created a fund to try to save companies. And they're willing to bet part of their pensions on it.

In September, a consortium Croft helped build from the United Steelworkers of America and other manufacturing unions finished raising $78.2 million for a capital venture fund, the Landmark Growth Fund, to invest in old-line industries.

アメリカのVCの元のお金の多くは、様々な企業の年金ファンドから出ている。鉄鋼業界のインサイダーが自らの年金ファンドに対し「悲惨な実績のテクノロジーVCに投資するくらいなら、自分たちの産業に投資してほしい」と設立、$80M弱のファンドをレイズしたというもの。

これは、テクノロジーセクターが使い切れない資金が他の用途に振り分けられる、という意味では好ましい調整といえる。
ーーーー
以上の混沌としたメッセージを私なりに解釈すると、「人口増は止まったが元のレベルに戻るまでには至っておらず、VC資金の過剰は未だ調整中、しかしフリーフォールは終わった」というところだろうか。これは仕事・生活を通じて感じる実感に近いイメージでもある。

Posted by chika at 11:45 PM
HPウェイ再び・・

今日朝刊を開いたら、昨日のBlogで私が書いたのと同じHP Wayに関するsentimentが、Mike CassidyのHP・Compaq M&A;の2冊の本に関するコラムに載っていた:
Mike Cassidy: Just when I'd thought the big HP fuss was behind us
It got me thinking: Is it possible anymore to run a large company successfully while treating employees with respect? Or are workers just a means to higher profit in good times and a way to cut costs in bad times?

Posted by chika at 11:37 PM
HPウェイに未来はあるか?

HPのコンパック買収のproxy battleを追った本が二冊来月発売される。Fast Company senior editorのGeorge Andersが書いたPerfect EnoughとBusiness Week editorのPeter BurrowsによるBackfireだ。Amazonで予約しました。

Dean TakahashiとTherese Polettiの書評によれば、Perfect Enoughの一節に
「One former Hewlett-Packard worker marched back and forth, banging a giant drum in mourning for the end of the HP Way」
とある。proxy投票の会場の情景だ。HP Wayがなくなることを嘆く元従業員のビビッドな抵抗の様子がわかる。

HP Wayは従業員にとってはすばらしいだろう。しかし、彼らのノスタルジアはわかるものの、一般株主の厳しい評価にさらされる公開企業が「和気あいあい」とした会社であり続けることは不可能なのではないのだろうか。ある程度成熟したところから、市場の要求する成長率を保っていくには、相当のウルトラCが要求される。

もう一つの選択肢は、未公開のままの大企業であり続けるというもの。11億ドルの売り上げを持ちながらプライベートのままであり続けるソフトウェア企業SASの例もある。

Posted by chika at 01:03 AM
アメリカの貧しさ(とSuper Bowlジョーク)

OaklandとSuper Bowlに関するタイムリーなブラックジョークがメールで送られてきた。Oaklandのすさんだ貧しさを揶揄したもの。笑った後にちょっと切なくなってしまう。このblogの最後にコピーしておいたので、読んでみて欲しい。

Oaklandの昨日のSuper Bowlの後の暴動は相当ひどかったようだ。暴徒があちこちの店のガラスを割って侵入、物を盗んだり、パトカーに車で突入する人まで出る始末。ローカル局KUTVのサイトでビデオも見られるが、ほとんど戦争のようである。RaidersがSuper Bowlで負けたことに便乗して、ただ単に暴れたいだけの人たちがほとんどだったようだが。
(こんな感じ↓)

Oaklandの一部は本当に危険。アメリカに時々ある「夜中に一人で運転して迷い込んだら、信号が赤でも止まってはならない」(強盗に襲われるかもしれないので)という場所だ。住人でも、「必要最低限以外、絶対外に出ない」という人がたくさんいるところ。

アメリカの貧困は、日々命の危険のある場所での暮らしに直結する。「アメリカ人は金の亡者」という批判も多いが、貧しいことが命の関わる国なのだから仕方ない。この激しい貧富の差を人々の努力の原動力にして、とにかく国全体の経済が成長してパイが増えればなんとかなる、と自転車操業的に突き進むのがアメリカンスタンダード。

Oakland RaidersのSuper Bowlジョーク・・・

The Coach had put together the perfect team for the Oakland Raiders. The only thing that was missing was a good quarterback. He had scouted all the colleges, and even the high schools, but he couldn't find a quarterback who could ensure a Super Bowl win.

Then one night, while watching CNN, he saw a war-zone scene in Afghanistan. In one corner of the background, he spotted a young Afghanistan soldier with a truly incredible arm. He threw a hand grenade straight into a 3rd-story window 200 yards away, ka-boom! He threw another hand grenade into a group of 10 soldiers 100 yards away, ka-blooey! Then a car passed, going 90 mph, bulls-eye!

"I've got to get this guy!" Coach said to himself. "He has the perfect arm!" So, he brings him to the States and teaches him the great game of football, and the Raiders go onto win the Super Bowl. The young Afghani is hailed as the Great Hero of football, and when Coach asks him what he wants, all the young man wants to do is to call his mother.

"Mom," he says into the phone, "I just won the Super Bowl!" "I don't want to talk to you," the old woman says. "You deserted us. You are not my son." "I don't think you understand, Mother!" the young man pleads. "I just won the greatest sporting event in the world. I'm here among thousands of my adoring fans."

"No, let me tell you," his mother retorts. "At this very moment, there are gunshots all around us. The neighborhood is a pile of rubble. Your two brothers were beaten within an inch of their lives last week, and this week your sister was raped in broad daylight." The old lady pauses, and then tearfully says "I'll never forgive you for making us move to Oakland ".

Posted by chika at 12:37 AM
January 26, 2003
Super Bowlとlocalism

今日は1年に1度の、全米が熱狂するSuper Bowlの日であった。毎年、友人の家に集まって見るのだが、今日は風邪でダウンして家でお休み。今回は、ベイエリアからOakland Raidersが出場するということで、この1週間みなソワソワ。新聞の1面に「Raidersのロゴのアイパッチ柄フェイス・ペインティングの方法」が大見出しで出る浮かれぶりであった。

なぜこんなに熱狂するかというと、地元の誇りがかかっているから。

アメリカは広く、個々の州や都市はそれぞれに特徴的。日本のように一部の大都市に全ての産業が集中しておらず、各々の州の各々の都市がそれぞれに産業を持ち、独立して機能している。日本が東京という巨大ホストコンピュータを核としたネットワークとすれば、アメリカは分散処理のサーバがあちこちに散らばるネットワーク。そういえば、昔とあるルータを日本で売ろうとしていた時「都市の間に網の目上にネットワークがひかれているアメリカと違って、リニアに都市が結ばれている日本ではルータの必要性・優位性が少ない」と言われたこともあった。

もとい、アメリカは、United Statesという名前がまさに体を現していて、個々の州がひとつの国だと思った方が理解しやすい。

個々の州の自治権がどれくらいあるかというと、例えばCaliforniaのすぐ上のOregon州は消費税が0(Californiaは7%超)。そのまた上のWashington州はincome taxがない。(マイクロソフトはWashington州にあるが、これはincome taxがないことをインセンティブにするため、という噂)Californiaの東隣のNevada州は、砂漠で元々ほとんど何の産業もなかったが、ギャンプルと売春を法的に認めることで、快楽の首都に(Las VegasもNevada)。(ただしCountyによっては売春は非合法。詳しくは(?)個人的に研究を重ねた人のまじめなFAQページに・・・

さて、地元のスポーツチームに、異常なまでの愛着と情熱を持つ人はアメリカ人にたくさんいる。テレビでスポーツを見てばかりいるダンナを持った妻を「Sports Widow」と呼ぶくらい。命を懸けて応援しているので、大きなゲームがあると、興奮したファンが暴動を起こすのはもはやごく普通のことと化している。先週も、RaidersのSuper Bowl行きが決まった試合の後は、熱狂したファンがOaklandで車や店に火をつけて、催涙ガスを使う騒ぎとなった。今日は400人の警官が警備に当たり、逮捕者を入れる仮設収容所も2箇所設置。テレビ局はヘリコプターをOakland上空に飛ばして暴動を待つ。今ゲームが終わって1時間ちょっと、というところだが、ちょうど生中継で催涙ガスが撒かれている様子がニュースで流れている。

こうした暴れん坊が出ることに慣れているアメリカでは、ワールドカップ・サッカーをホストしたときも、特に普段を越える警備は話題に上らなかったようだ。「フーリガン?銃でその辺を乱射したりするのか?ところ構わず放火したりするのか?そうじゃなかったら、まぁごく普通のアフターゲームの騒ぎだな」というのが、私が聞いたアメリカ人の意見である。タフだなぁ。

ちなみに、Oakland Raidersは大差で敗れ去ってしまった。中継でも「nightmareのような」という言葉が頻出。ただでさえへこんでいるベイエリアの景気に影響しなければ良いのだが。

Posted by chika at 08:07 PM
January 25, 2003
American Idol

American Idolが始まった。

去年の夏に「ダメモト」で作ってみたら大ヒットした番組の第二弾である。

オーディションで全米から集まった素人シンガーが毎週歌で競い合う。駄目なシンガーを毎回冷酷に落として行く方式で、勝ち残った一人だけがAmerican Idolとして100万ドルの賞金とレコードデビューを約束される。投票は視聴者が電話で行う。水曜にライブで全員が歌い、その夜投票があって、木曜に落選者を発表、翌週に続くという流れである。

第一弾放映中、10人ほどの挑戦者が残っているくらいの時に、偶然テレビをつけたらやっていて、それ以降釘付けになってしまった。

なぜか。

歌がうまいからだ。マジにうまい。日本で30年位前にやっていた「スター誕生」なんかと桁違いに歌がうまい人がたくさんいる。

人口が多いからか?それとも人種が違うから?それとも、最近は日本人も歌がうまくなったんだろうか?時々行く日本食スーパーで流れている日本の若手グループの歌は、聞いていると脳がねじれそうなひどさだが・・・・。ここ15年くらい日本のテレビを見たことがほとんどないから実はわからない。

American Idolの話に戻って、第一弾では特にTamyra Grayというアフリカン・アメリカンの女の子がめちゃくちゃにうまかった。"House is not a home"というソウルフルな曲を歌ったときなど、鳥肌が立つようなうまさだった。抜群なスタイルと、インターナショナルな美しさと、優美さがあって、メロウなものからパンチのある曲までこなせる歌唱力である。

彼女はラッキーでここまで来たのではない。何年も前にMiss Atlantaに選ばれたこともあり、いろいろなオーディションに挑戦して、何度もだめでやっとここまできた。しかも、American Idolでも、やっぱり最後から4番目くらいで落ちてしまった。(彼女が落ちたとき、コメンテーターとして番組に出ていた懐かしのスターPaula Abdulがショックで泣いてしまった)

完璧すぎるのかもしれない。圧倒的過ぎる。Halle BerryのルックスにWhitney Houstonの歌唱力。American Idolに応募した理由として「To share my talent with the world」と答える自信。

もちろん、最後に残った他の挑戦者もそれぞれに個性的だった。オーディションの最初の瞬間から「俺がスターだ」というオーラ(と態度)をまとっている人もいた。歌だってうまい。でも、Tamyraは特別だ、と私には思えた。だから、彼女が落ちたときはとても残念だった。が、番組が終わったあと、テレビドラマへの出演や、レコードデビューも決まって安心。

American Idolに釘付けになってしまったもう一つの理由は、番組がアメリカという国らしさを体現していたからでもある。

それは「ダイヤの原石はお呼びでない」というお国柄である。「自分で磨いてから出直して来い」という国なのだ。「自分でも才能を自覚していない『醜いアヒルの子』が、テニスのコーチ、バレーの先生、過去の大女優、師匠、その他もろもろの『大御所』に認められて、無我夢中で訓練をするうちに、自らも気づかないまま才能が開花する」という日本的なシンデレラストーリーは成り立たない。「才能があって、しかも自分の才能を自覚して、血のにじむ努力をする人」がうようよといるので、ぼーっとしていたら「ダイヤの原石」であったとしても誰も探しに来てくれないからだ。

この「磨くのは自分」というシステムが社会の隅々まで浸透しているから、なんにでも学校がある。ビジネスからワインつくりまで、「自分はダイヤの原石だ」と思ったら、自腹で学校に行って磨いた上で相手に証明するのが、この国のルール。

もう一つ、American Idolにアメリカを感じるのが、超ヘタな人も物怖じせずにオーディションにやってくるところ。

今週は第二弾American Idolの初回で、各地のオーディションの面白いところを集めて見せていた。
審査員の一人、イギリスのレコードレーベルのSimonは、とんでもなく口が悪い。
第一弾では、Simonにけなされて泣いてしまった挑戦者も多々。
それを知りながら、とてつもない異次元の音感を持った人もオーディションにやってきて、ぼろくそに言われても
「いや、自分は歌がうまいのだ」と言い張ってその場を離れず、警備員に連れ出されたりとか。

あと、今回の予選で、明らかにobese(病的に肥満。アメリカ人のほぼ3人に1人がそうなんだが)のアフリカン・アメリカンの女の子が、「学校の友達金を出し合ってオーディションの旅費を出してくれた」といってやってきていた。

こういうのもとてもアメリカっぽい。「自分たちの仲間から、優れた人材が世に出る」ということが誇りなのだ。この子はものすごくうまかった。窓ガラスが割れそうな勢いの声量と、パンチ。一次予選はパス。ただ、前回は、結局最後に残った10人ほどはみんな美形ばかりだったので(歌自慢大会じゃなくて、アイドルを探すのが目的だから)、彼女はどこまでいけるのかな、とも思うけれど、圧倒的にうまいから、是非がんばってほしい。

「侘び寂び」はあまりないが、「圧倒的なもの」がたくさんあるのがここアメリカである。

Posted by chika at 04:49 PM
January 24, 2003
Silicon Valley Chic

今日、とある大手米国企業と長いミーティングがあった。
相手側は、南カリフォルニアに本社があり、シリコンバレーにもオフィスがある。今日のミーティングはシリコンバレーで。本社では、びしっとスーツをきているが、こちらではみんなカジュアル。

しかし、そのカジュアルに違和感がある。みんな「柄物のシャツ」を着ているからだ。

一般的なシリコンバレーのカジュアルは、もはや制服みたいなもの。そのルールは、

1)夏も冬も長袖シャツ。半袖シャツは「geek(オタク)ルック」とみなされる。ただし、半袖でもポロシャツはOK。
2)シャツの素材はコットン。化繊は駄目。(He is all polyester!といったら「趣味が悪いやつ」と同義。)
3)シャツの柄はないのが好ましい(ワンポイントOK)ストライプまでは許容範囲。
3)ボトムはチノパン。でなければ、ダークなウールパンツ(黒・茶など)。

これは男性の場合。女性はもうちょっと大雑把だけど。

今日は、見慣れない柄物のシャツの人たちが会議に並び、時々ゴルフ場に来たような錯覚に捕われた。きっと「シリコンバレーだからカジュアルでいいのさ」と考えて同化しているつもりなのだと思うのだが・・・・。

しかも、マーケティング担当者はど派手なハワイアンシャツを着ていた。黄色のストライプに青いヨットと赤い太陽の柄。「マーケティング部門はハワイアンシャツが制服」と冗談を言っていたが。

ちなみに、ハワイ出身のうちのダンナはアロハシャツにうるさい。「裏地使い」で「モノトーン+暗めの一色」というのがアロハシャツのルールで、「表地で派手な色」は「俗悪なハワイ観光客ルック」とのことだ。(「表地を使い、地味な色だが大胆な柄のもの」も正式なアロハシャツなのだが、そういうタイプは、センスがいいのと俗悪なのが紙一重なので、相当おしゃれなローカルの人以外は、危険なので避けた方がいいとのことである。)

ということで、家に帰って昼に見たハワイアンシャツを報告、「ハワイを侮辱された感じ?」と聞くと、「ふっふっふっ。正式なハワイのシャツはアロハシャツ。ハワイアンシャツと呼ぶ段階で全くハワイのことをわかっていない証拠。そういう素人の発言は気にならない」のだそうだ。

カジュアルも奥が深いのです。

Posted by chika at 10:15 PM
January 23, 2003
裏をかけ!

Aribaが一見「死に体」である。1999年には一世を風靡したBtoBアプリケーションの会社だ。

Aribaの抱える問題の要点は、
1)現Chairmanが前CEOに、2001年に1千万ドル(プラス210万ドルの航空券代)を支払った。これは個人的金銭授受とされていたが、実は会社のexpenseとして処理されるべきものだった。
2)上記以外にも、過去のdisclosureに不正な会計処理が含まれているので、2000年にまでさかのぼって帳簿を訂正することに。
3)しかし、訂正作業が間に合わず、disclosure書類が期日までにSECに提出できない。このため、Nasdaqからdelistされる可能性が大。
4)実際にSECの非公式な調査が始まったことも、今日発表された。さらにいくつかの株主訴訟も起こされている。

ああ、もうAribaもだめか、と思うのが普通であろう。しかしその実態は・・・・

「実はビジネスのほうは結構順調に伸びていて、人も雇用している」という、驚くべき事実。Aribaで働く友人情報である。
(ただ、これだけ訴訟やSECの問題があると、今後セールスに響いてくる可能性はあるが・・・)

世の中はマスコミのニュースだけではわからない。

マスコミに限らず、一部の人たちの間ではご神託のように重要視されている「シリコンバレーVCの評価」というのも、必ずしも実態を反映しないこともある。

例えば。

知り合いのスタートアップは、これまで投資家に見向きもされず風前の灯火だったのだが、競合の(やはり風前の灯火だった)スタートアップが大手に買収され、時を同じくして別の大企業が同じビジネスに参入した。ビジネスの面から言えば「急に大手の競合が2社登場する」というのは大変悩ましい事態。が、VCからの関心は突然高まった。VCにとっては「大手も手を出す魅力領域、しかもexitの可能性あり。競合のM&A;価格で企業価値も算出できる。」という「おいしい」分野になったからだ。これなど「VCの評価と事業の本質が全く違う」良い例だろう。

私が得意とする仕事はbusiness development、事業開発なのだが、いつも頭を悩ますのが「ある会社の、シリコンバレー・コミュニティでの評判を教えて欲しい」という依頼。もちろん、世で言われていることを知った上で相手会社との交渉を行うのならいいのだが「評判が悪い」というだけで、交渉の対象から落としてしまうこともある。「評判と実態が違うことも多々ある」ということを納得してもらうのは結構難しい。

Aribaの例で言えば、delist寸前だとか、株主集団訴訟が雨後のタケノコのようにあるとか、そういうことを知らずにAribaと商談をするのは、もちろん問題だ。しかし「第3者情報に基づいた決断」では「隠れた宝」を探し出すことができない。みなが価値を認めるものは高くつくのは当たり前。誰も知らない価値を見つけ出して始めて、良いものを安価に手に入れることができる。

Serendipityという言葉がある。日本語では、「掘り出し物をうまく見つけ出す才能」という長い言葉に訳されるが、serendipityこそbusiness developmentの醍醐味。

negativeな情報は、相手に直接確認すればよい。例えば、delistされてまず問題になるのは、将来の資金調達、顧客からの信用、それに社員のretentionというところ。それぞれに関して相手先会社がどのような対応策を持っているかを聞けばよい。その上で、さらに第三者に確認できる情報についてはきちんと裏を取ることで「自分の判断に役立つ正しい情報」ができあがるのである。

英語では、日本語の情報にあたる言葉にinformationとintelligenceがある。intelligenceの方がより高度に分析された「上等の情報」で、CIAの「I」もintelligenceのI。マスコミやVCの噂話は「information」、相手から直接入手して裏を取った情報は「intelligence」というところだろうか。

ちなみに、Aribaの情報をあちこちのサイトで読んでいて発見したClass Action訴訟ポータル、その名もBig Class Action.com。原告に加わりたい人は、自分の情報をウェブでインプットすればクリックするだけで、取りまとめ法律事務所に情報が届くという「お手軽訴訟」です。いやはや。

Posted by chika at 08:42 PM
January 20, 2003
X-Menは人間でないという判決

X-Menという人気漫画、後に転じて映画、がある。スパイダーマンとか、スーパーマンとか、ああいう路線の由緒正しいSF漫画ですね。

X-Menの出版元のMarvelは、子会社経由で、フィギュアを中国から輸入して販売していたのだが、その関税をめぐって裁判になった。「人間を模したもの」はdollで、「人間以外を模したもの」はtoyという区別があり、dollには12%、toyには6.8%という税率の差があるため、Marvel側が「X-Menは人間ではないから、toyとしての関税がかけられるべき」と政府を訴えたもの。で、Marvelが勝った。

詳しくはWall Street Journalの記事へ(有料です)。


怒ったのはファンである。「X-Menが人間ではないと主張するなんて信じられない」「許せない!」と。いわく、
"Marvel's super heroes are supposed to be as human as you or I. They live in New York. They have families and go to work. And now they're no longer human?"

Marvel側はあわててこんな声明を発表
"Don't fret, Marvel fans, our heroes are living, breathing human beings -- but humans who have extraordinary abilities ... . A decision that the X-Men figures indeed do have 'nonhuman' characteristics further proves our characters have special, out-of-this world powers."

負けた政府側の主張も笑える。いわく、
Each figure had a "distinctive individual personality," the federal legal team argued. Some were Russians, Japanese, black, white, women, even handicapped. Wolverine, the government insisted, was simply "a man with prosthetic hands."

これって、関税の担当者が業務のために頭をひねったのだろうか?それとも弁護士が考えたのか?彼らは実はX-Menのファンだったりするんだろうか?

しかし、こういう記事をさりげなく、でも結構詳しく載せちゃうところがWall Street Journalの人気の密かな元なのではなかろうか。オンラインで見るWall Street Journalの記事はEメールで知り合いに送ることができるようになっている。で、今日仕事関係の記事を人に送った時「最もEメールで送信された記事」の一位にこのX-Menの記事がランクされていて、ついつい読んでしまった。一位になっているところを見ると他の人にも愛されているんだろう。

大英帝国が沈んでもこれだけは残るのではないかと言われている(注:言っているのは私だけかも)Economistも、実は笑える記事がぱらりぱらりとあちこちにあって楽しみにしているのでした。

Posted by chika at 11:49 PM
January 18, 2003
MBAは役に立つか?

今でこそ有名になったMBAだが、私が受ける頃は日本ではそんなに知られてなかった、、、ような気がする。

受験勉強をするとき、渋谷の本屋で
「MBAの参考書はどこにありますか?」
と聞いたところ
「スポーツはX階です。」といわれ「?」

NBAと間違えている、と気づき
「いえ、そうじゃなくて、ビジネススクールの...」
「専門学校でしたらX階です」
ということで全然拉致があかず、最終的に「TOEFLの参考書」と言って通じたことがあった。

アメリカではどうかというと、専門職(弁護士、会計士、エンジニアなど)以外のプロフェッショナルではMBAはもはや当たり前すぎて二束三文の観も強い。

とはいうものの。

今日のニュースで、数百万人のresumeを扱う求人サイトMonster.comのChairmanであるJeff Taylorが、自らのサイトでハーバードMBAを詐称していたことが発覚したとのこと。本当は「Certificate in Owner/President Management」を取っただけなのに、MBA取得と書いていたというもの。求人サイトのトップ自らresumeに嘘、ということで話題に。詳しくはこの記事へ・・・。

去年の10月には、ストーレッジ・ソフトウェアのVeritasのCFOが、スタンフォードMBAを詐称していたことが発覚、CFOは辞任し、同社の株は1日で15%下がった。

石を投げればスタンフォードMBAに当たるここシリコンバレーでは、私のスタンフォードMBAのクラスメートも2-3割は職探し中。仕事がある人も激しいIT不況下「人生つらいよ」状態の人が多い。みなでピザなど食べながらしみじみ「嘘をついてまで持ってるって言いたい資格だったんだねぇ」と、ちょっと心慰められてしまったのは、他人の不幸で幸せになる人間の性でしょうか。

Posted by chika at 10:27 PM
January 16, 2003
Microsoft pays dividend

Microsoftが配当を出すことが正式に発表された。多くのメディアで取り上げられたが、詳しいものとしては例えばCNETの記事がある。
いわく
「Microsoft set its first-ever annual stock dividend Thursday and said it will split its stock as quarterly earnings surpassed expectations.
In an unexpected move, the software titan announced an annual dividend of 16 cents per share prior to a 2-for-1 stock split. The total payout will be $870.6 million, a fraction of its $40.5 billion cash reserves. 」

約5兆円の莫大なキャッシュリザーブから1000億円ほどを放出するだけではあるが、これは「ソフトウェアの歴史の転機」になるのか?


「配当金を払わない」ということは「私の会社は、あなたのお金を、他の運用方法よりずっとたくさん増やしてみせます。」ということのシグナルである。高成長分野のソフトウェア産業では、もちろん配当金を払う企業などまずなかった。その業界トップのMSが配当金を払うということは「もはやソフトウェア事業では、他の業界(や国債やその他もろもろ)を大幅に凌駕するようなリターンを提供できなくなりました。」と言っていることになる。

もしこれが、グローバルなIT不況が続く間だけの一時的なもので終わらない場合、「ソフトウェア産業の、高成長期から成熟期への転換点」となることが考えられる。

一方、もう一つの解釈として、配当金はMSのモノポリーによる違法な利益を象徴していると考えることもできる。違法なモノポリーによる尋常ならざる利益を得ているために、配当金でも払わなければ説明できないだけのキャッシュがどんどん溜まってしまう、という解釈だ。

2年前の裁判の半ばまでは、MS分割が真剣に語られ、Bill Gatesがボードミーティングで涙を流したというまことしやかな噂が流れるほどに追い詰められていたMSだが、今ではすっかり力を取り戻している。

そもそも、いったん製品を開発してしまえば、一つ一つの製品を新たに作るコストがただ同然のソフトウェアは、規模の不利益が少なく、たくさん売れば売るほど効率が上がっていく。通常の産業は、どこかで「規模の不利益」が生じるため、「神の見えざる手」に任せておけば、自然と複数の競合がせりあって、よい製品を安価に出す、という構造になる。しかし、「規模が大きいほど儲かる」場合は、「神の見えざる手」に任せたらモノポリーが誕生してしまう。こうした業界は資本主義経済にあっても、政府の介入の対象になるべきものである。しかし、ソフトウェアには、「技術革新の速さ」という、規模の利益とは別の競合促進要因があるため、裁判の結果でも結局政府の規制下におかれることはなかった。

しかし、実は今も着々とMSが「世界のモノポリーの勝者」として成長しているのではないか、もしかしたら配当金はその象徴なのではないか、という懸念を消し去ることができない。

Posted by chika at 04:27 PM
January 15, 2003
HarvardとeLearning

Wall Steet JournalにHarvard大学などのエリート学校がついにeLearningで学位を与えるプログラムを始めたという記事が掲載された。(有料ですので悪しからず)

競争の激化・ボーダーレス化はいろいろな産業で「Globalize or Die」、グローバルな強者になるか駆逐されるか、という状態を生み出した。ついにそれが教育に及ぶ。上の記事の中にも、ハーバードのPublic Health学部のdean for academic affairs、James H. Wareの"The world is changing whether we like it or not"とのコメントが載っている。新たな世界に対応するためにはやむなし、ということだ。

今週の私のBlogは「学ぶこと・感じること、そしてそれにメディアが及ぼす影響」というのがunderlying theme。インターネットによって教育のコンテンツ、メソッド、そして機会がグローバル化することは、電子商取引の進展なんかよりずっとずっと重要なことだと個人的に思う。

とてもエキサイティングだ。

Posted by chika at 09:53 PM
William Gibson started blog

William GibsonがBlogを始めた」。SFファンでない方のために翻訳すると、「神が毎日空から降りてきて『その日の御言葉』を告げるようになった」って感じでしょうか。

もう読むたびにくらくらする。ドライでありながらセクシーな文体。細めた目でじっと世の中を見詰めているような世界観。こんなものに毎日触れられてしまっていいんだろうか!!こういうのが当たり前だと思って育つこれからの子供たちは一体全体どんな贅沢な精神世界を構築するんだろう!?

どれくらいセクシーかは言葉に尽くせないので、実際に読んで頂くとして、私が読んで腰が砕けてしまった一文だけ紹介します。彼のBiographyの出だしです。

「Gene Wolfe once said that being an only child whose parents are dead is like being the sole survivor of drowned Atlantis. There was a whole civilization there, an entire continent, but it's gone. And you alone remember. That's my story too, my father having died when I was six, my mother when I was eighteen.」

インターネットの父と言われるヒトはたくさんいるけど、実はイメージを喚起したという意味で、Gibsonのサイバーパンク(Neuromancerとか)がインターネット(やAIやその他もろもろのIT技術)の発展に一番大切だったんじゃないか、と思う私でした。

Posted by chika at 09:35 PM
絵を見るって・・・・・

先週末梅田さんに勧められてGerhard Richter展をSan Francisco MOMAに見に行ってきた。アメリカ人はリクターと発音する。

超リアリスティックな絵が有名なので、そういう画風の人だと思って現地についてみたら、半分以上抽象画だった。超リアリスティック系のほうが少ない。無知である。

会場では説明用の音声を聞くことができるヘッドフォンを借りる。私はこれが好きで、最近ではどこの美術館に行っても必ず借りている。絵の解説にはあまり興味がないのだが、どういう経緯で描かれたかを聞くことでイメージが広がるからだ。

今回も、1988年に描かれたテロリストの獄中死をテーマにした一連の絵の背景の説明に聞き入る。新聞に発表された死体の写真を元にした絵なのだが、写真はその後警察が回収して決して発表されず、Richterの絵だけが残った。誰かが生きた証の残像である死体の写真の、そのまた残像のような絵だけが、リアルに今に残っている。一枚の絵は、薄暗がりの中に人間らしき黒い影があって、それが死神のように見える。

私は絵や音楽を物語として理解する。絵や音楽から「物語」が見えたとき、初めて感動できるのである。例えば、Philippe SaisseというミュージシャンのMasquesというinstrumentalの曲を聞くと、「雨の降る海が見える古い大きな家の中で、いくつものドアを開けて、次から次へと部屋を通り抜けていくが、部屋には家具一つなく誰もいない」という情景が浮かぶ。最初にこの曲を聴いたときに、ばぁっとこの情景が浮かんで、それ以降はまぁ条件反射的に「Masquesを聞いたら、空っぽの家の中の情景が頭の中のテレビに写る」という感じ。

こういう「いったん物語(的なもの)に変換しないと理解できない」という私には、オーディオでこんこんと作品ができた背景を説明してもらうのは状況喚起力がアップするのでよい。BGMなんかまでつけてくれることがあって、サービス満点である。

しかし、もちろん、絵は絵というnative modeのまま感動できた方がずっといい。そういう能力があったら、オーディオ紹介なんていらないだろう。

一度だけ、「絵を絵として感動するってこういうことかな」という体験をしたことがあった。東京でクリムトとエゴン・シーレの展覧会があったときのこと。クリムトのユーディットという絵を見た瞬間、片目が光っているのを見て、息を呑んだ。ただ、もう、なんだか呆然としてしまった。その後は急に激しく疲れて眠くなり、夢遊病者のように歩き回り、やっと見つけたベンチに腰を下ろしたところ、その瞬間に眠ってしまった。きっとこういうのが「絵を絵として感じる感動」なんだろう、と思った。その後同じ衝撃を求めて世界の美術館に行ったけれど、二度と同じ感覚はやってこない。残念ながら。

Posted by chika at 12:08 AM
January 13, 2003
読む能力

「小学生の漢字読み取り能力がものすごく向上しているということが、テストの結果明らかになった」という記事が1ヶ月前くらいに日本のニュースサイトに出ていた。で、そのことを絡めてBlogについて書こうと思ったけど、どんなにGoogleを回しても、読んだニュースもオリジナルのデータも見つからない。うーむ。

ということで、「見た瞬間に書く」っていうリアルタイムなBlogの重要性を再認識しました。

何を書きたかったかというと「インターネットで情報があふれ、今さらにBlogによって『世の知識人』といわれる人々の視点に基づいて収集された情報やその解析までが、なんとデイリーかつリアルタイムで入手できるようになった。こういう時代、重要なのは『早く正しく読む技術』。小学生の読み取り能力の向上は、既にそうした時代を先取りしているのではないか」ということなんですが、もとネタのリンクがないとインパクトにかけるなぁ。これからはちゃんとすぐ書くようにします。

しかし、子供の頃インターネットがあったとしたら、私は一体全体どんな風に育ったんだろう。私は活字中毒で、子供の頃は身の回りのものを読みつくしてしまい、図書館の貸し出しの限界も超して、仕方ないので薬の効能書きまで読んでたのであった。国語辞典を「あ」から読んだり。日本文学全集も家にあったという理由だけで読んだな。つまらなかった。(さすがに二葉亭四迷の「フロツクコオトを着た紳士が・・・」なんていう文章は小学生の私にはつらいものがありましたので。)

あの頃インターネットがあったら、もっと自分の興味のある情報にチューンして没入できただろう。といっても、最近あまりに自分にとって必要な情報だけを入手できてしまうというインターネットの「Tune-ability」が怖かったりもするんだけど。私と興味を同じくする人とだけの、孤立した世界ができていくような感じがして。

Posted by chika at 09:57 PM
January 11, 2003
天才はどこからやってくるか

Phychology Todayという雑誌に「ノーベル賞受賞者は普通の科学者と比べてどう違うか」という記事が載っていた。記事はまだオンラインにないので、リンクが張れない。

それによれば、ノーベル賞受賞者は趣味人なんだそうだ。普通の科学者では1%しか趣味を持っていないが、調査対象の化学でのノーベル賞受賞者134人では、ほぼ全てが長期間継続した趣味を持ち、半数以上が非常にアーティスティックな趣味を持っている。(絵画・楽器など)

この調査結果は二つの解釈の仕方があって、一つは「趣味によって、視野が広がり、研究にいい結果がでる」という「趣味原因型」。もう一つは、「ノーベル賞を取るほど秀でた人は、他の分野(例えば趣味)でも優れた能力を発揮する」という「趣味結果型」

去年Signaling理論でノーベル賞を取ったMike Spenceは、私がビジネススクールにいたときの学長なのだが、彼も大型バイクとウィンドサーフィンが趣味で、ノーベル賞受賞時もマウイでサーフィンをしていた。ちなみに彼は、人間離れした知的な風貌(いや、ほんとにSF映画に出てくる未来人類みたいなルックスなのです)と、常人離れした誠実さと温かみを持つ、たまげるくらい良い人である。

もとい、天才と趣味のどちらが原因かはさてはおきつ、異なる分野をまたがって知覚を統合できるのが天才の秘訣なのでは、と記事は言う。たとえば、ファインマン物理学で知られるRichard Feynmanは、「数式」を「リズムを取って口ずさむ」という音楽的方法で実体験として理解し、Einsteinは自らが電荷を持つ粒子となることをイメージして思考を進めた、とある。

こうした「異なる分野を超えた知覚統合」がさらに一歩進んだ「Synaesthesia」という症状を持つ人が優れた科学者には多いともある。Synaesthesiaは、常人と異なる神経系を持つことで起こる感覚の混同で、日本語では共感覚と言われる。10万人に一人の割合で起こるとされるSynaesthesiaに関しては、優れた本がいくつも出ているが、例えば以前読んだThe Man Who Tasted Shapesは面白かった。

この本のタイトルは「味を感触として理解する、料理が趣味の人(確か科学者だったと思う)」を指している。味見をすると「頬の上を正方形の物体にブツブツの突起が付いたものが滑っていく感触がする」といったような「味覚と触覚の共感覚」が起こるのである。だから、「もうすこし三角の突起をつけよう」などという感じで味を極めていくことができる。「味覚」+「触覚」で二重に味を感知できるわけだから、シェフとして優れているのは当たり前の結果とも言える。それ以外にも、絶対音感があって、全ての音が別の色を持って見えるという「聴覚と視覚の共感覚」など、とにかくいろいろな人が登場する。

ちなみに、私は夢が漫画のことがあるんですけど、これは「3次元映像と2次元画像の共感覚」で天才の証?・・・のはずないか。どちも視覚であることには違いないし、そもそも3から2に次元が一個下がってるんだから全然リッチな体験じゃないな。

でも、夢が漫画だったことがあるのは本当。目が覚める直前、最後のコマに「つづく」って書いてあった。もう一回寝たら「つづき」って書いてあるコマから始まった。誰も信じてくれないんだけど。

Posted by chika at 12:04 PM
January 10, 2003
日本の痴漢(2)

週末なんで、今日は予告したまま放置してあった「日本の痴漢(2)」をお送りします。

要は、「無数の痴漢との出会いを通じて、痴漢の行動原則を見抜いた」という話ですね。1)痴漢ターゲティング原則、2)痴漢逆とび原則、については、前編の日本の痴漢(1)をご覧あれ。

3)痴漢並行原則
痴漢は平行に並んでくる。人間は、どんなに混んだ電車であっても、必ず周囲の人と角度をつけて立とうとするものだ。ごくまれに、肋骨が折れるほど混んだ電車で、思わず平行になっちゃうという災難はあるけれど、通常は、たとえ背中同士が向かい合う形であっても、ちょっと角度を変えてぴったり体がくっつかないようにするものである。

ところが、痴漢は必ず平行になるのだ。別に後ろからだけとは限らない。斜め前に、私と向きは同じで平行に立ち、後ろ手で触ってくるヤツもいた。(さすがに完全に正面から向き合う形で触られたことはないが。)

それから、「手のひらをぴたりと静止させて押し付けてくる」というがまず最初の攻撃であることが多い、これは本人は「手の甲か平かわかるまい」と思っているんじゃないかと思うのだが、その微妙なやわらかさとか温かみで、平か甲かはすぐわかるのだ。

4)痴漢無言原則

触られたらもちろん反撃する。それも、だんだん、エスカレートした反撃をするようになった。

レベル1:明らかに不快な風情をかもし出し、周囲に痴漢を知らしめる。もぞもぞ動くとか、何とか痴漢のほうを見るとか。しかし、あまりにたくさん痴漢に会っているうちに、「こんな甘ちょろいことで許してはならない」という決意をする。

レベル2:罵倒する。「社員証を出せ」「会社に電話する」「変態」「おとなしく触られてると思ったら大間違いだ」とか、延々怒鳴る。しかし、このアプローチでは「ひょえー、怖い姉ちゃんだ」という周囲の人の白い目が私に注がれることに。これじゃまるで私が加害者だ。

もっと静かに、かつ効果的にやっつける方法はないか、ということで・・・・

レベル3:殴る・蹴る。もちろん、この場合相手が本物の痴漢じゃなかったらただの暴力。間違いないというところまで待ち、絶対に言い逃れできない状態で、バッと相手の手をつかみ、そこからビシビシと殴ったり蹴ったりするのだ。満員電車だから、あまり大したことはできないのだが。これは、非常にストレス解消になった。大人になってから初めて人に手をあげたが「悪いやつを殴る」という行為は結構カタルシス。そのうち、仕事で嫌なことがあって落ち込んでいるときなど「今日も痴漢に会わないかな」と待ち構えるようになった。電車に乗り込むとき、わざとうつむき加減で気弱そうな表情で小首をかしげながら乗ったり。で、触ってきたらボコボコにするのである。

以上、全てのレベルの反撃に対する痴漢の反応は「無言」である。絶対に微動だにせずじっとしている。まだ20代の若い男で、私の思いがけない反撃に瞳孔が開いて硬直してる人はいた(英語で言うと、deer caught in headlight状態)。後は判で押したかのように宙を見据えたまま静止。というわけで、「痴漢無言原則」。

・・・と、こう書くとなんだか喜劇みたいだけど、「警察に突き出す」という本来あるべき行動をとらなかったのは、「逆恨みされる」のが本当に怖かったから。相手は日常的に痴漢行為を働いている変態犯罪者ですからねぇ。

5)痴漢髪フェチ原則
というわけで、数年続いた痴漢と私のバトルだが、ある日唐突に終わりを告げる。腰まであったソバージュをばっさりショートヘアにしたのだ。(切った髪の毛が重さ1キロ以上という劇的な断髪だった。)するとその日から、きれいさっぱり、一度も痴漢に会わなくなったのである。

痴漢に会っている間はわからなかったが、痴漢にはもう一つの重要な原則「髪フェチ」があったのである。痴漢がゴキブリだとしたら、「超ロングヘア」はゴキブリホイホイの中のエサだった。

わかっていたら、もっとさっさと髪の毛を切ったのに。

6)番外編
さて、その痴漢遍歴の中で、当然特に変な痴漢にも出会った。

■スカートめくり
かなり空いて、新聞が読めるくらいの車内で、私は珍しくフレアスカートなどというものをはいていた。すると、サワサワと時折スカートが足に触れる。「なんかへんだなぁ」と思っていたのだが、突然お尻の上の辺りに指で下から上に「1」の字を書くような感触が!「あっ」と振り向くと、身長180センチ以上ある体格のよい中年男性が、両手で私のスカートをたくし上げていて、もうお尻が見えるぎりぎりまでめくられているではないか!スカートがサワサワしていたのは,彼が少しずつ少しずつスカートをたくし上げる過程で起こった現象だったのだ。

この話を会社でした時の同僚たちの反応は、
「うーん、その気持ちわかるなぁ。僕も背が高いから、女の人のお尻まで手が届かないんだよね。」(身長183センチの男性)
「だんだんちょっとずつ、ふくらはぎからひざ後ろから太ももが見えてくるっていうの、いいねぇ。」
おいおい・・・・しかし、そういう会社だったな。

■顔参加型
社会人1年目の時、朝の地下鉄で同期入社の男性3-4人と輪になって話をしていた。(空いてたのだ)すると、私の斜め後ろにぴったりと疲れた会社員風中年男性が立った。そして、私と、私のすぐ横に立っている同期男性の間ににゅーっと首を突き出してきたのである。私たち全員最初は無視していたのだが、私が隣の同期男性の方を向くと、この変な人の顔が目の前15センチくらいに立ちはだかっている。仕方ないので私は無理やりまっすぐ前を見たまま会話に加わっていたのだが、全員だんだん無言に。ついに逆側に立っていた同期が「渡辺、こっちに立つ?」と言ってくれて、場所交代。すると、変な人はチッという顔をして立ち去って行った。残った私たち全員「なんだったんだあれ?」と言葉を失ってしまったが、いや、なんだったんでしょうね。

■X-File
もっと幼少のみぎり、中学生のとき、大きな安全ピンの針で痴漢の手を刺したことがある。もちろん最初は、「ちょっと突付いたら、恐れをなして退散するだろう」と思ったのだ。ところが、突付いても突付いても手を握ってくる。(この人はじっとりと汗ばんだ手で、私の手を握ってくるというロリコン系痴漢だった。)それで、だんだん強く刺し始めた。しかし、5ミリさしても1センチさしても、びくともせずに触ってくる。痛がっている様子すらない。「この人はもしかして宇宙人なのでは」と、びびった。

ーーー

いや、人口密度の高いところにはイロイロな人がいるものです。本当に。

Posted by chika at 10:09 PM
January 09, 2003
CES, Tivo, Amazon and personazation

CESがはじまった。Consumer Elecronics Show、業界人っぽく発音するならセス、ですね。ここ数年Comdexが下火になってきていて、かわりにCESが盛り上がってきている。CESのおかげで、今週はいろいろなガジェット系の新製品・新機能の発表がある。

例えば、Tivoは、ネットワークでつながったコンピュータ上の写真・ビデオ・音楽ファイルをテレビでプレイする機能を付加することを発表した。これは、かなり魅力的。なんといっても、我が家にはダンナがインターネットからダウンロードした莫大なビデオライブラリーがあるのだ。

しかし、彼のライブラリーは全て自分で焼いたCD上にある。デジタルカメラでとった写真も全部CDに収まっている。(デジタルカメラ暦は1996年からだ)

ということは。ロジスティクスを考えると、

「お、あのビデオ(または写真)を見よう」
  ↓
PCのある部屋に移動して、CDを探し出し、PCをオンしてWindowsが立ち上がるのを数分待つ
  ↓
CDをPCに入れる
  ↓
テレビのある部屋に戻ってきてTivoをオン

ということになる。この使い勝手じゃまだ駄目だなぁ・・・・。
こうなってくるとやっぱり全てのファイルを格納できて、かつ毎日24時間アクセス可能なホームサーバが必要だ。容量はテラバイト級かな、やっぱり。

ちなみに、Tivoといえば、パーソナライゼーションに関する面白い記事がしばらく前にWall Street Journalに載っていた。この記事は有料なので、下記にキモだけ抜粋する。

Tivoは、持ち主が見たテレビ番組を覚えて、そこから「きっとこの人はこういう番組が好きだろう」という番組を勝手に録画し始める。ところが、ユーザーの好みと違う番組が録画されるようになってしまうことがある。

例えば・・・「Mr. Iwanyk, 32 years old, first suspected that his TiVo thought he was gay, since it inexplicably kept recording programs with gay themes. A film studio executive in Los Angeles and the self-described "straightest guy on earth," he tried to tame TiVo 's gay fixation by recording war movies and other "guy stuff."

"The problem was, I overcompensated," he says. "It started giving me documentaries on Joseph Goebbels and Adolf Eichmann. It stopped thinking I was gay and decided I was a crazy guy reminiscing about the Third Reich." 」

なぜかTivoにゲイだと思われてしまい、ゲイ関係の番組がどんどん録画されるようになってしまったストレートの男性が、「違うんだぁっ」とばかり、戦争映画など「マッチョ系」をひたすらプログラムし続けたところ、今度は「ナチスドイツが好きなクレージーな男」という風にTivoに誤解され、ゲッペルスやアイヒマンのドキュメンタリが録画されるようになってしまった、というもの。

それ以外にも、同様にTivoにゲイだと思われた男性が、ヘテロセックス系のポルノを録画し続けてついに「好色なただの男」とTivoにわかってもらえ、「My TiVo doesn't look at me funny anymore.」と安心する、とか。(そのかわり妻に白い目で見られるようになる)

また、Tivoに誤解される前にTivoを訓練しよう、とばかり全ての宗教番組に「Thumbs Down(駄目)」のレーティングをしたある人は、Tivoが不気味な殺人映画ばかりを録画するのを発見。これはまずい、と「お料理番組」の録画を積極的に初めて、何とかOK。

一方、韓国人と思われて韓国語の映画ばかり録画されるようになった人は、韓国語番組全てに「Thumbs Down」をしたところ、次の日からなぜか中国語番組が録画される。

・・・うーん、みんな苦労してます。

私も実はAmazonで似たような思いをしている。Amazonでは購買ヒストリーにしたがってrecommendationをしてくれるのだが、私の買う本やCDがあんまりにもめちゃくちゃなカテゴリーなせいか、せっかくのrecommendationがただの「新作ページ」とほとんど変わらなくなってしまったのだ。

Amazonで「edit my history」というページにいくと、自分が過去に買った本のカテゴリが載っている。この中から新しい本を選んでrecommendしてくれているわけであるが、本で54種類、音楽で38種類のカテゴリーが「Chika's favorite」として記録されてしまっている。Amazonも私みたいな人間を相手にして、かわいそう。例えば一番最近買った本はこんな感じだ:

■Wild Heart: 19世紀おわりから20世紀前半にかけてパリで文学サロンを運営していた、奔放なレズビアンかつ親からの遺産で大金持ちのアメリカ人女性の伝記。
■The Power of Nice:著名なスポーツ選手を多数クライアントとしていたエージェントの人の書いたネゴシエーションのハウツー本。
■National Giographics Field Guide to the Birds of North America:その名のとおりバードウォッチング用鳥図鑑。
■Emergence:Asperger Syndrome(高機能自閉症)の大学教授の自伝。
■IBM and the Holocaust:IBMとホロコーストとの暗黒の関わりの本。

これじゃぁ、何をrecommendしてよいかわかるまい。まぁ、一つだけ共通点をあげるとしたら全てノンフィクションということ。私は読書にムラがあって、ひたすら小説を読む時期とか、ひたすらビジネス書を読む時期があり、今は、歴史やサイエンスのノンフィクションが、仕事以外での読書の主な対象だ。

例えば今寝る前に読む本は「The Atoms of Language」という、言語学の大学教授が書いた本。この本によれば、日本語とNavajo Indianの言語は実は構造が似ているのだった。Navajoといえば、第二次世界大戦でアメリカ軍が暗号として使った難解な言語である。WindtalkersというNicholas Cage主演の映画にもなった。アメリカ軍の暗号はそれまで全て日本軍に解読されてしまっていたが、Navajoの言語そのものを暗号として使い始めたところ、全く解読されなくなった、という話。しかしNavajoの構文は皮肉なことに英語より日本語に近かったのである。

しかし、この本はAmazonがrecommendしてくれたわけではない。本好きが好むような本を、本好きが好むようにdisployすることで生き延びているindependent系のMenlo Parkの本屋、Kepler'sで平積みされてたのだ。(アメリカでは、オンライン本屋と全国規模のチェーン系本屋に押されて、independent系の本屋はほとんどつぶれてしまって存在しない。)

というわけで、1-to-1 marketingとか、personalizationとよくいうけれど、実はそんなにたやすいことじゃない。Amazonほどの莫大な購買者層があっても、まだまだ私が読みたいと思う本をrecommendするほどの知恵はついていないのからみても、当面は難しいだろう。

Posted by chika at 10:56 PM
January 07, 2003
Softwareの行方

アップルがブラウザーを発表した。その名もSafari。
■Borlandが復活してきている。スプレッドシートやらデータベースといった主力製品がマイクロソフトに席巻され、一時期はCEO自ら「No one knew it(=Borland) was still alive」というほどの会社だったが(私もとっくになくなったと思っていた)、なんと、2000年3月よりmarket capがあがったシリコンバレーのテクノロジー企業13社の一つなのだ。Javaの開発ツールで「software industryのスイス」として地位を築いている
■ついにマクロソフトがdividendを出すのでは、という噂が。もうソフトウェア業界は成熟してきたから、というのがreasoning

***********
この3つのニュースはソフトウェアの成熟によるマイクロソフトのドミナンスに抵抗するアップルとBorland、という構図の象徴なのか?

フィンランドがあれだけ少ない人口にもかかわらず、携帯電話産業が発展したのは、百以上もの電話会社が乱立、厳しい競合の末に数社が生き残ったからだった。アメリカのソフトウェア業界も、やがて数社に統合されるのだろうか。それはいつ起こるのだろうか?

まだまだ、ソフトウェアは「plug and play」になりきっていない。テレビ並みに安定したとき、初めてソフトウェアは「数社がドミネートする成熟産業」になるだろう。でも、その前に「テレビがPCなみに不安定になる時代」が来る確率もあるんだよなぁ。自動車OSなんてのまでMSは開発してるので「何もかもが不安定になる時代」だって来るかもしれない。「2001年宇宙の旅」は宇宙船のAIソフトHALが反乱する話だが、そんな派手な乗り物に載らなくても「ソフトウェアの異常稼働」を楽しめる(?)時代はすぐそこにあるかも。

Posted by chika at 11:14 PM
January 03, 2003
新年とMITと戦争

左右対称の2002年が終わってしまった。次は2112年まで待たないとならない。

世の中はだんだんきな臭くなっている。それとももう既に第三次世界大戦が始まっていたりするんだろうか?多分、オーストリア皇太子が暗殺された時に「うむ、第一次世界大戦が始まったな」と思った人はいなかっただろう。そういう意味では、将来今を振り返って「9・11が第三次世界大戦の契機だった」なんてことになったりする可能性だってある。

きな臭いニュースも多いここアメリカだが、ちょっと小気味良いニュースがあった。

MITが政府の40万ドルの助成金付きプロジェクトを断った、というもの。「外国人の研究参加を制限すること」という条件付きなのを嫌ったためだ。NPRという、私の大好きなラジオ局で今日の朝流れていたが、MITのインタビューは爽快だった。「MITはアメリカ国家への貢献も忘れてはいないが、それ以上に世界の科学教育に貢献する使命がある」というのが一貫した主張。

下記のサイトで録音も聞けます。

MIT Rejects Federal Contract, Questions Research Rules

The Massachusetts Insitute of Technology turns down a $400,000 contract for a federal research study. The government ordered limits on participation by foreign students. The case highlights new restrictions on research since the Sept. 11 attacks. NPR's Renee Montagne talks with MIT aeronautics professor Sheila Widnall.

そうそう、タイトルは、「セックスと嘘とビデオテープ」風にしてみました。この映画の監督の新作はGeorge Clooneyを主人公にしたSolaris。つい最近見たけど、なかなかよかった。(元はロシアの映画)古典的SFファン必見!

Posted by chika at 06:18 PM