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July 31, 2003
壊れているカリフォルニア

カリフォルニアは州知事リコールの真っ最中である。今の争点はシュワルツェネッガーが立候補するかどうか。意外にも出馬しないのでは、という方に傾きつつあるが。

現州知事のミスマネジメントを明確にしてしまったのが、年度が始まってもその年の予算が承認されなかったこと。めちゃくちゃである。

***
予算は結局承認されたのだが、その経緯は、Sacramento Bee新聞へ。カリフォルニアの政治のことだったら、やっぱり州政府所在地Sacramentoの新聞に限ります。Assembly OKs deal in marathon talks

いわく、
The Assembly, which was in session 29 hours and 28 minutes, eclipsed the old record of 26 1/2 hours at 2:30 p.m.

30時間弱に及ぶ議会の途中ではけしからん議員も登場。

At one point, shortly after 11 p.m., photographers snapped pictures of four Assembly members puffing cigars and sipping scotch from paper cups.

そんなこんなで承認された予算は$38 billion赤字のもの。4兆円超か・・・・。

***
さて、「こんなカリフォルニアに誰がした」ということで、州知事Davisのリコールとなるわけだが、カリフォルニアでは州知事のリコールは住民投票である。Davisは去年再選されたばかりなのに。。。。

Economist7月3日号: Is the Golden State Governable (要subscription)によれば、なんでこんなことになっているかというと

In 1911, California added three direct-democracy measures to its constitution: the initiative process (which allows voters to pass laws directly); the referendum (in which voters support or strike down laws passed by the legislature); and the recall.

ということで直接民主制が行き過ぎているのである。確かに、やたらと住民投票が多い。Proposition XXなどの名前で、学校予算を増やすための増税やらなんやら、ざわざわといろいろな提案のPRがされている。

Between 1980 and 2000, 626 statewide initiatives were circulated...In Los Angeles, there were 43 measures on the ballot in 2000, including local ones.

過去20年間で626もの全州的住民投票があったと。これに加えて、市独自の住民投票もある。1年間に40以上もの問題の決断を迫られる住民のほうも大変だ。古代ギリシャじゃないんだから。これでは、何のために議員を選んだのか、全くわからないではないか。

California is one of only two states requiring a two-thirds “super-majority” of both houses to pass a budget.

しかも、住民投票に加え、州予算承認には3分の2のsuper majorityが必要なため、今回のように予算が決まらない異常事態になった。そのせいで、、、、

If California really were independent, the IMF would have been called in by now.

とほほ、、、であります。

「限界は、超えてみなければ、そこが限界とわからない」というのが私の持論で、何事も「しまったやりすぎた」というところまでちょっと踏み出してみないと、どこまでが許される限界なのか判明しない。カリフォルニアは「民主主義の限界」をちょっと超してしまった、というのが良識ある人たちの間でのコンセンサスとなりつつある昨今である。

Posted by chika at 11:28 PM
July 30, 2003
In the Blink of an Eye(カンブリア紀の謎)

休暇に持っていったもう一冊の本はIn the Blink of an Eye. Oxford大学のZoologist、Andrew Parkerによるもの。

カンブリア紀が始まる5億4千4百万年前には、動物のPhyla(分類学上「門」と訳される種類)はたった3つしかなかったのに、たった5-600万年のカンブリア紀の間に一気に38にまで増え、その後は増えることなく現在に至る、という「カンブリア・ビッグバンの謎」を追ったものである。

筆者が提唱する謎の答えは、「カンブリア初期に視力を持った動物が初めて誕生、これがその視力を武器にpredatorとして他の動物をがんがん食べ始め、それと対抗するために、他の動物も保護色の獲得など様々な変貌を遂げたために、一気に爆発的進化が起こった」というもの。

本としては、著者の方には申し訳ないのだがちょっと退屈。Natureかなにかで数ページの論文で発表してくれればそれでOKという感じだ。結論を最後まで引き延ばして「進化ってなんだろう」「視力ってなんだろう」「光ってなんだろう」と、延々と冗長な説明が続く。そこまでカンブリア紀に興味のないシロウトにとってはかなりつらいものが。

が、アナロジーとしてはとても面白い。「小さな、でも決定的な変化が一つ起きたために、その周囲の全てが圧倒的に変貌してしまう」という「特異点」が、何事にも存在するんじゃないかと思うからだ。

例えばシリコンバレーという場所は常に技術の「特異点」を探している場所だ。「半導体」がそうだったし、「インターネット」もそうだっただろう。社会全体のあり方にインパクトを与えるような「一つの小さな変化」を常に追い求めている。そして、その変化の起こり方もtry and errorとsurvival of the fittestという生物の進化に似た動きをする。

そしてまたその「小さな変化」は、それが起きた当初は、小さいがゆえに本当に決定的かどうかわからないという、これまた生物の進化と似たところがあるのが、面白くも難しいところ。カンブリア紀の最初に視力を手に入れたtrilobiteという動物も、trilobiteに見つかって食べられてしまった他の視力のない動物たちも、よもや「ふふふ、これで世界が圧倒的に変わるぞ」とは思わなかったことでありましょう。

今日この瞬間も、どこかで将来の劇的な進化をもたらす「小さな変化」が生まれているのかもしれない、と思うと結構うきうきしませんか。

Posted by chika at 09:54 PM
July 29, 2003
Pentagonの失敗

アメリカは資本主義の国である。「そんなのあたりまえじゃん」と思うかもしれない。しかし、本当に主義主張として資本主義を信じ、その基盤の上に国家を作り上げている国なのだ。資本主義とは基本的には「自由競争によって最適状態が訪れる」という信念のことだが、これを信じている日本人は、実はほとんどいないのでは・・・。

さて、そのアメリカの信念をうかがわせる事件が今日ニュースに。Pentagon(のDARPA)が中東情勢の先物市場を設立しようとした、というもの。詳しくはSan Francisco Chronicleの記事などご覧下さい。中東情勢を読み、ある出来事にかける。それが当たったら儲かる、という市場を本気で作ろうとしたのである。その名もFutureMAP

いわく。
Traders could buy and sell futures contracts based on their predictions about what would happen in the region.

先物として取引できる事象の例がこれまたすごい。
Examples given on the market's Web site included the assassination of Palestinian leader Yasser Arafat and a biological weapons attack on Israel.

発表するや否や「テロリストが先物を買ってから、その通りのテロを起こして一儲けできてしまう」など非難が相次ぎ、あえなく中止に。

Pentagonの目的は中東情勢の情報の自由競争の場としての市場を開設することだった。「市場は常に個々のスペシャリストよりも優れた将来を読むことができる」ということ。

他人の国やよその元首への攻撃を商いの対象にしようという常識はもちろん疑うが、こんな発想をすること自体「資本主義的」だと思いませんか?

Posted by chika at 10:30 PM
Katharine Graham

ご無沙汰しておりました。休暇だったのであります。

休暇前の仕事のラップアップで忙しくなったあたりからblogをサボり始めたらあっという間に3週間近くたってしまった。

休暇には本を2冊持っていった。日本語の本だと、読み飛ばせるのでたくさん持っていかないとならず重くて大変だが、英語だと読むスピードが日本語の5-6分の1なので2-3冊で結構楽しめる。喜んでよいのやら悲しんでよいのやらわからないが。

1冊はWashington Postの社長だったKatharine Grahamの自伝。Pulitzer賞も受賞した本だから、読んだ方もいると思う。以前買ったのだが、みっしりと細かい字で、しかもずっしり600ページ超の重さに圧倒されて、本棚に置きざりになっていたもの。

富豪の娘として生まれ、召使が何人もいるお城のような家(複数)で育った後、貧しい家の出身だが気鋭の弁護士と結婚。やがて彼女の父親が経営していたWashington Postを、30代前半でダンナ(つまり入り婿的跡取り)が引き継ぐ。ダンナはテレビ局やNewsweek誌などの買収を繰り返し、精力的に事業拡大を図るが、激しい鬱病となり自殺。それまで主婦だった彼女が40代で事業を継ぐ。その後Watergateや激烈な組合闘争を勝ち抜き、彼女の指揮下でPostはFortune500に入る大企業となる・・・という波乱の人生を冷静に追った自伝である。

こんな濃い人生を送る人がいるとは。4つの異なる話=ストーリーがぎゅーっと詰まっているような本だ。

最初の「ストーリー」は大金持ちの娘の生い立ち。エキセントリックな両親と、途方もない富の中での子供時代が語られる。Katharine Grahamの父親が、親戚に
「うちの奥さんは二度同じドレスを着ないくらい着道楽で困ったものだ」
と冗談めかして嘆くと、
「まさか、自分の妻が二度同じドレスを着るなんて期待しているわけじゃあるまいね?」
という返事を返す、これまたとてつもない親戚がいたりとか。(親戚のほうの奥さんは毎年パリで莫大にドレスを買い込んでいた)Katherine Gtahamの学校の友達が遊びに来ても、バトラーや給仕に囲まれて、広大なダイニングルームでの食事に怖気づいたりする。

次の「ストーリー」は、これまたエキセントリックなダンナとの20年以上の結婚生活の話。非常に魅力的で明晰な頭脳を誇るダンナにじわじわとけなされ続け、自信を失っていくKatharine Grahamの姿が語られる。ダンナはビジネスの世界で注目を集め、JFKとも親交を深め政治的にも精力的な活動を繰り広げるが、躁鬱が激しくなってくるにつれて常軌を逸した行動が目立ち、ついには若い愛人と出て行ってしまう。その後、激しい鬱になったところでKatharine Grahamの元に戻ってくるが銃で自殺。

3つめの「ストーリー」は、ダンナの死んだ後、突如Washington Post, Newsweek、テレビ局などのグループ企業のトップとなり、未知のビジネスの世界にトライしながら強い自分を確立していく話。ダンナの死後すぐのPostでのスピーチでは、あまりに困り果てているKatharine Grahamを見かねた大学生の娘が「話の順番」のメモを書いてくれたりする、という途方にくれた未亡人の姿が語られ、その後の変貌を際立たせる。

最後の「ストーリー」は、傑出した経営者としてWatergateでニクソンを追い詰め、さらに暴力的な組合闘争に打ち勝って行く話し。トップマネジメントを次々に首にしたり、組合との戦いの仲介者には「組合に屈するくらいだったら喉をかききる」と宣言したり、という「強いトップ」の姿が語られる。

どの「ストーリー」もそれだけで一つの自伝を構成できる力と重みを持ったものである。普通の自伝のほとんどが、一つの「ストーリー」に、そのバックグランド情報をまぶしたものだとすれば、これはKatharine Grahamという人間が、いくつもの「ストーリー」を積み重ねて至った「人間としてのexistance」を語った類稀な自伝なのだ。

そういえば「存在の耐えられない軽さ」という本を昔プラハに行ったときに読んだ。(ある場所に行くときは、その土地を舞台にしたり、その国の人が書いていたりする本を読むのが好きなので。感じがでる、でしょう?・・・映画のほうは見ていないのだが)この本の私なりの解釈は「人間は人生で出会ういろいろなできごとに関し、起承転結を完結させて積み重ねていくことで本当の「存在」になる。つらいことも多い「転」や「結」を恐れて、楽しい「起」ばかり繰り返していると、かるーい「存在」になってしまう」ということ。ストーリーがストーリータルゆえんは起承転結の最後までがあること。でなければ、ただのエピソード。人は「ストーリー」を積み重ねて「存在」になるのである。

そういう意味ではKatharine Grahamは起承転結に満ち溢れた「重い存在」の人なのでした。

Posted by chika at 10:13 PM
July 10, 2003
ナノテクとPennsylvaniaと半導体

The promises, perils for nanotechというCNETの記事はNanteroというカーボンナノチューブで半導体を作る会社について。2004年末から2005年初頭にはプロトタイプを完成させたいとしている。ついにカーボンナノチューブが、カッコイイCGグラフィックスの域をでるのか、と期待が広がる。

この記事の後半は、しかしながら、と続く。ファウンダーがインターネット関連事業やら、他のベンチャーのコンサルティングやらをしていた人ゆえ怪しい、という記述で、じゃぁ普通の半導体の会社の人はどこから来るかということでこんな風に書いてある。
Semiconductor execs generally hail from three foreign countries: China, Japan and Pennsylvania.

かわいそうなPennsylvania。そんなにド田舎ではないので、ハイテクがないということだろうか。

さらに毛並みのよさの条件としてこうある。

They are usually engineers by training and had to claw their way up through the ranks of plant management, sales or chip design.

この二つの条件(外国人で、業界出身)を満たすといえばやっぱりNuCOREの渡辺誠一郎さんでしょうか。(渡辺さんのインタビューはこちら)。かっこいいですよ。

Posted by chika at 11:05 PM
July 09, 2003
Online retailの未来

今日は、Yahooをはじめとしていろいろな企業の2Qの業績発表があったのだが、のきなみよい業績で、この間から時々私が書いているeCommerceの躍進(下記のような・・)が数字に表れてきた。

5月2日 景気
5月14日Ecommerce復活
5月18日シリコンバレーの景気が上向いてきた

さて、これからもecommerceは伸びていくことは間違いない。以前に触れたBtoBのシステムを提供するAribaもTicker symbolのARBAの最後に「危ない会社」を表すEがついていたのだが、それも取れてちょっとずつだが株価も上がってきた。(Yahoo Finance参照

このままecommerceが進むとどうなるか。その将来にあるものの一つは「価格のダイナミックアジャストメント」だと私は考えている。

大学のミクロ経済の講義の最初に出てくる需要曲線と供給曲線は皆さんおなじみだと思うのだが、物を売る側が消費者ニーズを表す需要曲線を算出するのは大変難しい。「その値段だったら買う」という消費者が、数多くの異なる価格ポイントのそれぞれで、どれくらいいるかわかって始めて需要曲線がプロットできる。しかし、一つの製品に違う値段をたくさんつけるのも難しければ、ある値段にしたらこれくらい売れる、という結果をリアルタイムで把握することも難しい。だから、需要曲線は推測の域を出にくい。

ところが、これをリテールの現場で実現し、「最も儲かる価格付け」をすることがオンラインだったら可能になる可能性がある。

そのトライアルをしていると思われるのがAmazon。私がアメリカのAmazonのサイトにアクセスすると右の上に小さくChika's Gold Boxなるものがピカピカしている。こんな感じだ。

これは個々人にpersonalizeされた特別価格奉仕品、ということになっている。箱をクリックするとある商品が現われる。買わない、という選択をすると、次の商品が登場する。(買わないといった瞬間に、前の商品にはもう戻れない)こうやって順繰りに10数個の商品を見ることができる。箱を空けたら1時間だけその価格は有効、ということで、「今すぐ決断せよ」と迫られるのである。

大抵いりもしないものばかり。しかも、市価より高いものまである。回りの人たちと話しても誰一人Gold Boxを開けて何かを買ったという人に会わない。内容は、なべ釜、キッチンアプライアンス、工具などなど。

なんでこんなものが、、、と思うのだが、実はこれが需要曲線算出のためのギミックらしい。いろいろな属性のユーザーに、異なる価格で商品を提供、誰がどれくらい買うかを分析して需要曲線を出し、最適価格でその商品を売ろうとしているとのこと。正しい需要分析には、
1)確率統計的に有意な数の消費者がその商品を見て
2)そのうちの多くが購入せず、ごく一部だけが買う、という価格ポイントがたくさんある
という二つの条件が必要。だから、ほとんどのユーザーにとって、なかなか欲しいものが登場しないのは理にかなっているのだ。

これは、Amazonに価格最適化ソフトを売り込もうとしたとあるベンチャーの人から聞いた話。消費者の需要弾力性をリアルタイムで測ってそれを価格付けに反映させる、というのは航空券の世界では長いこと行われてきた。航空券というのは、同じ経路が突然高くなったり安くなったりやたらと変動するが、実はその後ろでは大変sophisticateされた数学的処理のプログラムが走っているのである。それを一般のリテールにも利用しようという試みが行われているわけだ。

リテールは利益が薄い。こういうプログラムで価格最適化ができれば、飛躍的に利益構造が改善する可能性が高く、技術を導入する企業としない企業で体力に圧倒的な差が出るだろう。

しかし、こういう技術が発展して、personalizeした価格付けがされるようになると、「あまり買い物をしないかわり、いざするときは値段に無頓着」という私のようなデタラメなshopperは、「こいつは需要曲線がフラットだから、思い切り吹っかけても買うぞ」という分析結果となって、他人よりやたらと高い買い物をさせられてしまったりしそう。困ったことである。

Posted by chika at 09:39 PM
July 08, 2003
McDonald's Hotspot開始

マクドナルドがベイエリアの75店舗でWiFi(802.11)ホットスポットを提供すると発表。
McDonald's serves up wireless Web access

同社のDon Thompsonいわく"The most important part is, 'Is this relevant to our customers?'"。その通り。全くもってrelevantでない可能性は高いのではないか。アメリカのマクドナルドの客層ははっきり言って低所得者層が多い。

****

Economistの6月26日号にBubble trouble:Is the “Wi-Fi” wireless internet boom about to turn into a bust?という記事が載った。

WiFiホットスポットはバブル、ということ。例えばアメリカのStarbucksのホットスポットがいかに利用されていないかという話がある。

Perhaps the best-known network of hotspots is that operated by T-Mobile, a wireless operator, in over 2,000 Starbucks coffee shops in America. Around 25,000 people access the hotspots each week, which works out at an average of less than two users per day per hotspot.

1日1店舗平均2人しか利用者がいないと。

The Wi-Fi hotspot at Amsterdam's Schiphol airport is used by only a dozen people each day.

オランダのSchiphol空港でも一日せいぜい10人ちょっとしか使っていないとのこと。

とはいうものの今は値段が高過ぎるだけという可能性もある、と続く。
Users may be deterred by high prices. Even after a recent round of price cuts, using T-Mobile's network of hotspots costs $6 per hour, $40 per month, or $360 per year. Other operators in America charge $40-70 per month. Prices in Europe are as high as euro130 ($150) per month.

それはいくらなんでも高いだろう。ユーザー調査では1時間1ドルにまで利用料が下がったら20%が使ってみたいといっているという結果も(ただし、「技術に詳しいユーザー」を母集団とした場合だが)
Only 3% of tech-savvy American consumers surveyed said they would pay $2 per hour for Wi-Fi access, but 20% said they would pay $1.

ということでEconomistの記事はこんな風に締めくくられている。
Already, though sales of Wi-Fi equipment are booming, prices have tumbled, and margins are now wafer-thin. Wi-Fi will continue to spread, and will remain popular. But, rather like the internet, it may disappoint many investors who hoped to make their fortunes.
(投資については、記事の前半で、2000年来$1.5B(1800億円、か)のVC資金がWiFi関連技術に投資されているとある。)

しかしホットスポットはWiFiの利用形態の中でもかなりニッチ。これをもって「だから802.11がだめだ、というのはちょっと間違い。Economistも筆がすべることがあるんだな、という感じだ。家庭やオフィスでの利用はどんどん進んでおり、こちらの市場は拡大中であることはEconomist自身が数ヶ月前に言っている。

例えば3月27日号のHotspots and friesでは、過去数年の間のWiFiの家庭、大学、オフィスでの利用増はRunway successであり、
According to Jupiter, another market-research firm, 57% of American companies already use Wi-Fi, and another 22% plan to do so within the next year.とのこと。

私も、わざわざマクドナルドでPCを広げたいとは思わないが、家もオフィスも802.11bだ。ということで、アメリカでのWiFi普及に関しては、ホットスポットはNG、家庭やオフィスでの利用はGo、というのが当面の方向性だろうと思っているがどうだろうか。

Posted by chika at 09:18 PM
July 06, 2003
Multimedia- symphony & Sony Clie

San Jose Mercuryの日曜版のhttp://www.bayarea.com/mld/mercurynews/6222412.htmはConcert Companionという、classicのコンサートで解説を聴衆に配信するシステムの話。ただいま開発中。

It works this way: Each person is handed a device; Valliere has been customizing Sony Cliés for use in focus group tests, which began in Kansas City in March, drawing positive feedback from the small number of participants. As the music begins, a technician seated at a laptop in the back of the concert hall, pushes a button at predetermined points in points in the score. The information is then transmitted simultaneously to the Cliés, which run on a Palm operating system, appearing on their screens as a continuous ``play by play'' about the music.

カスタマイズしたClieを利用してワイヤレスで音楽・作曲者・楽器などの解説をタイムリーに送信するというもの。

賛否両論だが、classic離れが進んでいる中でより多くの人々を引き付けられるのでは、という期待がある。

以前に絵を見るって・・・というエントリーでGerhard Richter展で音声での解説用ヘッドフォンの話を書いたが、私はこういう類のオンサイト解説が好きだ。最近では、解説自体が刺し身のツマ的存在を越え、ちょっとした評論本くらいの価値をもっていると思われるものも多い。

芸術ではないが、例えば、Alcatraz島の牢獄は今は観光地となっているが、そこで借りられる解説ヘッドフォンでは、囚人として実際にAlcatrazに収容されていた人の肉声で当時の思い出が聞ける。「独房で全くすることもないので、毎日じっと夢想にふける。だんだん慣れてくると、頭の中にカラーテレビがあるようにくっきりとある場所を思い浮かべることができるようになり、いながらにして世界のいろいろなところに旅ができるようになった」みたいな話が淡々と語られて、単なるコンクリートの箱でしかない牢獄の残骸が急に生々しいものとして見えてくる。

とはいうものの「芸術の解説」は邪道では、という迷いが以前はあったのだが、それが吹き飛んだのはAndrew Wyethが自らの回顧展の作品を解説したAndrew Wyeth: Autobiographyという本。圧倒される。絵を何倍も楽しめるというのもさることながら、芸術家の頭の中ってのは、普通の人とは次元が違う構造なんだなぁ、と圧倒された。例えば、奥さんの絵がある。ちょっと紅潮した頬で、やや斜めを向いているが、それは夫婦喧嘩の最中に彼女が激昂して顔が赤くなって激しく彼をなじった瞬間に、「これだ、私は妻の本質を掴んだ」と、それを後日絵にしたのだそうだ。(別に怒っているのが彼女の本質というのではなく、感情が激した瞬間に何か本質的なものが内部からほとばしり出た、と、そういうことであろう。)夫婦喧嘩の最中にそんなことを思うダンナを持った妻は大変ではないか。それ以外にも、ふとした瞬間に「ある人間・動物・風景・その他もろもろの何かの本質を掴み取った」と感じ、それを絵にするということが繰り返し出てくる。(逆に「本質」が掴み取れず、なかなか絵がかけずに苦労したなんて話も出てくる)そうやって何かの「本質」に突然迫られ続ける人生というのは、息苦しいものではないのか。

内田善美の「星の時計のLiddell」という漫画がある。その中で、登場人物の一人が美しい風景を見て「僕は画家でも作家でもなくてよかった。画家だったらこの美しい一瞬を切り取って自分の中で絵に昇華してしまう、作家だったらこの風景を言葉にせずにはいられない。でも僕は芸術家ではないから、この美しさを美しさとして享受できる」みたいなことを言うシーンがある。(20年前に読んだものを記憶からたぐっているので、ちょっと違うかもしれないが、とにかくこういう意味のことだった。)きっとそうなんだろうなぁ、と思う。Wyethの見る世界はWyethの絵のような緊迫感に満ち溢れているのであろう。

ちなみに、Wyethの本のカバーになっている、夜の室内で犬が半眼を開いている絵は、15年位前に朝日新聞の日曜版に大きく載ったことがあった。元のタイトルは「Night Sleeper」というのだが、朝日新聞は「夜の眠り」と訳していた。が、この本を読むと「窓から差し込む月の光が、よく乗っていた夜行列車(night sleeper)を思い出させたので、このタイトルにした」とあり、誤訳だったということがわかる。重箱の隅をつつくようだが。いずれにせよ、この本はWyethファンでなくても楽しめるはずです。

Posted by chika at 11:10 PM
July 03, 2003
blog & 言論の自由

メーリングリストの発言は言論の自由で守られる、という判決が下された。これによりやblogでも言論の自由が確保されると考えられている。

PC Magazineの Free-er Speech on the Netに裁判に到った経緯やその判決の意義がわかりやすく書いてある。

The court has, in essence, drawn a line between the opinions of an individual expressed electronically, and the presentation of the same material as fact in a forum such as a newspaper. At its heart, the ruling clears the way for content on the Internet to be treated as dialogue, and not necessarily set-in-stone fact.

雑誌や新聞は、企業や個人を誹謗中傷すれば訴えられる。そこで書かれたことは「事実」として広く理解されるため、「事実」を曲げて書いたとすれば、それは書いた方が悪いということ。一方個人がポストする電子的メディアは単なる「対話」であるからして、言論の自由で守られる、ということ。

判決文はこちら

blog(やメーリングリスト)は、内容こそ玉石混交だが、莫大にリアルタイムに情報発信されるというメリットがある。この判決はその方向性をサポートするだろう。

ということで、ますます求められるのは読み手側の情報精査能力ですね。

Posted by chika at 03:51 PM
July 02, 2003
B級グルメ続きの続き

今週の金曜はJuly 4thで休日。日本だと連休がたくさんあって、またか、という感じだが、アメリカでは年間にほんの数日しかないので希少感がある。

この連休にかけて夏休みをとる人が多い。今日は水曜だが、もはやみな休暇に入っているらしく、どこの会社に電話しても連絡が取れない。やっとコールバックをくれた某スタートアップのCEOも「今僕Tahoeにいるんだけど」。別の会社は「弊社は木曜から連休です」との録音が流れるばかり。まだ水曜なんだけどなぁ。。。。道もガラガラだ。というわけで、すっかり気分は夏休み。こういうときにせっせと雑用を片付けないとイカン。

雑用ついでに、この間書いたシリコンバレーB級グルメの続きのそのまた続き情報。ベトナムサンドイッチだが、Story RoadのLee'sより別の店の方がうまい。101をStory Roadよりさらに南に二つほど行ったCapitol Express WayをEastに出て、最初に左折可のある信号(ガソリンスタンドがある)を左に曲がって、すぐ左手のサンドイッチ屋。Lee'sはパンは上手いのだが、味がアメリカンナイズされているので。

とはいうものの、もっとおいしいところがありそう。誰か知っていたら教えてくださいませ。

B級的には、Mountain ViewのLos Charrosでタコスというのもオツなもの。ビーサン、短パン、Tシャツで出向き、ChorizoやCarne Asadaのタコスなど頼み、Tecateでもクイっと。トマトと玉ねぎとチラントロと唐辛子を刻んで混ぜただけのメキシコでは定番のサルサもシンプルで美味い。854 W. Dana St. (between Bryant St. and Castro St.) です。その場で絞ってくれるオレンジジュースもよいし、Agua Fresca(フルーツジュース、、なのかな)もGood..私はスイカ味か、米味(甘酒のアルコール抜き、シナモン味、みたいなものですね)が好き。(Tacos以外のメインディッシュはあんまりぱっとしないので悪しからず)

そういえば、先日のPho情報には、Hitoshiさんが渾身の突撃レポートを書いてくれています。ベト麺's Clubなる組織を結成しているらしく、その気合の程はすごい。Hitoshiさんは、スイスのビジネススクールを出た後、シリコンバレーで起業、現在はSVJENという組織をやっているのだが、料理への気合の入りようはすごく、我が家では尊敬をこめて「Salmon Guy」と呼ばれている。以前、アラスカから取り寄せたサーモンを自分でさばいて作った刺身をくれたからである。吉田兼好も言っている、知恵のある人より医師より、もっと素晴らしいのはモノクルル友と。

Posted by chika at 08:57 PM