February 11, 2004
青色発光ダイオード特許紛争を見て感じたこと

先日からかなり話題になっている青色発光ダイオードに関する訴訟報道を見ていましたが、個人的にはこの問題に関して多くのメディアのコメントに疑問を感じていました。経営者という立場もあることだし、多くの技術者から批判を受ける可能性は大ですが、覚悟の上で少し書きたいと思います。

訴訟の内容は多くの方がご存知だと思いますが、「新しい技術を発明して会社に多くの利益をもたらしたのに、発明者である社員に対する経済的還元が少ない」というものです。今回のケースだと、会社の内規としては新しい特許出願に関する報奨金が2万円であるのに対し、特許法の「発明に相応の金額」に則って考えると、今回の発明は研究者に対して600億円程度の還元があってしかるべき、というものになっています。

確かに多くの企業で新しい技術を発明する研究者に対する処遇があまり改善されていないことはよくわかりますが、会社が新しい発明に対する報奨金のルールを事前に隠しているわけでもないので、基本的にはその会社に属したのであれば、その会社のルールに従うのが筋ではないかと思うわけです。

もし納得がいかなければ、そこには2つの選択肢があって:

(1) 社内的に内規を変更するための努力を払う
(2) 会社を辞めて別のいい条件の会社に移るか、そういったものが存在しなければ会社を作る

こうした選択も出来たはずです。

そもそも今回の訴訟では「この研究開発はほぼ私1人でやったのだから、その発明の対価を発明者が受け取るのは問題ない」との見解を発明者側がしていますが(ニュースステーションを見ていたら、森本さんの質問にそういった感じで答えていらっしゃったので)、そもそもその研究のための仕組みや設備への会社の投資、また発明した技術を販売するための投資など、そもそも研究が実るまで、またその実ったものを経済価値に変えるまでには様々な投資が行われているわけで、前記の主張にもかなりオカシイところが含まれているのではないかと思っています。

更に研究開発というのは必ずしも成功するものだけとは限らないので、普通1企業が様々な研究テーマをポートフォリオとして持ち、リスクを減らす努力をしていますが、ここにも直接的に1つ1つの研究に直接関係するわけではないものの費用がかかっているわけです。

こうしたことを全て取っ払って今回のような議論を行い、結果として今回のような判決を導き出すことは僕はおかしいと思っています(法律が詳細にわかるわけではないので、法制面での正当性というよりは、常識的な話として、ということになりますが)。地裁の判断基準というのも正直よくわかりませんでした。

経営者の立場からすれば、逆にこうした事態はチャンスとして捉えるべきなのだと思います。しっかりと様々な研究を目利きして、技術者にも有利な契約条件を作れば、より優秀な技術者と仕事が出来る可能性があるわけですから。かつてソニーのような会社も、技術者にとって天国のような会社を作ろうというビジョンを掲げて、研究者のビジョンを大事にしてきたからこそ、今のポジションがあったのだと思います。

こうしたビジョンを制度的にしっかりと整備し、有利に技術開発を進めなかったのだとしたら、それはひとえにチャレンジャーのポジションにある企業経営者の怠慢なのだと思います。ただ、一方的に会社側が批難されることの多い今回の件に関して言えば、自分で自信のある研究開発に関して、リスクをとろうとしない日本の研究者のスタンスにも、やはり一部問題があると思っています。

米国とは違って、可能性のある研究をしていれば、放っておいても周りからお金も人材も集まってくる環境がないのは事実ですし、だからこそ研究者の受難が長らく続いているのだとも思いますが、リスクをとらずして経済的なリターンだけを求めるのは、そもそもバランスを欠いていると思います。

個人的には起業しやすい環境を作るために何が出来るか?ということを自分の過去を振り返りながら考えることが多い今日この頃ですが、研究者のスタンスに立てたことは一度もなかったので、おう、俺はそういうテーマでブレストしてやってもいいぞ、とか、自分としては今もっている研究テーマで起業してみたいのだけど、いろいろ不安なので相談してみたい、という方がいらっしゃいましたら気軽にご連絡下さい:-)

Posted by mitarai at 05:43 AM
February 06, 2004
元祖オンライン日記

なぜ記事のカテゴリが「アート」なのかというと、最初のオンライン日記プロジェクトはアーティストが始めたからってことで。

たまたま過去の自分の履歴を探していたら、自分が大学生の頃のオンライン日記も出てきて、「ああこんなに若かったのね」と少しブルーな気分になってしまいました。今の学生の方がよっぽど頭の良さそうな文章を書くよなぁ...。1995年のオンライン日記が残っているのを後から見ると、結構感慨深いものがありますね(今はインターネット上で見ることが出来ますが、これを書いていたのはFirstClassというBBS上だったと思います)。

メガ日記プロジェクト
http://www.ntticc.or.jp/Calendar/1995/The_Museum_Inside_The_Network/mega/index.html

Posted by mitarai at 02:31 PM